【11月28日 AFP】仏大手高級ブランドのルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)がロシア・モスクワ(Moscow)の赤の広場(Red Square)に設置した巨大なスーツケース型のパビリオンに国民から批判が集中し、設置に関わった百貨店がルイ・ヴィトンに撤去するよう求めた。この百貨店が27日、明らかにした。

 ルイ・ヴィトンを象徴する「LV」のモノグラムが全面にあしらわれたこのパビリオンは2階建てで、高さ9メートル、幅30メートル。赤の広場を挟んでクレムリン(Kremlin)の向かいに建つ19世紀創業の老舗高級百貨店グム(Gosudarstvenny Universalny MagazinGUM)のすぐそばに19日に特設され、過去にルイ・ヴィトンのスーツケースを愛用した旅行者に関する展示施設として12月2日のオープンが予定されていた。

 多くの観光客と市民はこの巨大スーツケースに隠れて大半の観光名所が見えなくなると非難。また共産党はウラジーミル・レーニン(Vladimir Lenin)の遺体が保存されている「レーニン廟(びょう)」に近接していることに激怒し、文化財保護関係者らも赤の広場は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録されている場所だと改めて強調した。

 地元メディアから数日間にわたって痛烈な批判を受けたグムは27日、自社ホームページで「一部の市民からの意見と、同パビリオンが事前に合意していた大きさを超えているという事実に鑑み、当店はルイ・ヴィトンに対し同パビリオンを直ちに撤去する必要があると伝えた」ことを明かした。ヴィトン本社の広報担当者は「正式な撤去命令は受けていない」としているが、モスクワ市のウラジーミル・チェルニコフ(Vladimir Chernikov)広報局長が「(問題のパビリオンは)誤りだった」と述べるなど、複数の市当局者がインタファクス(Interfax)通信に対し、同施設の解体準備をしていると明らかにした。

 一部のメディアからは、市民に是非を問うことなく、明確な責任者も不在のまま設営されたこの巨大広告施設を、裏取引で何でも可能になる現代ロシアの象徴だと位置付ける指摘もあったが、国民の中には悪くないと見る人もいた。観光客のエレーナさんは、「ロシアでは何もかも禁止したがる。私たちにはユーモアも創造性も欠けている。想像力もない」と嘆き、「もしそういった特質を持っていたらヴィトン1個くらい許していたはず」と語った。(c)AFP/Olga ROTENBERG