【11月27日 AFP】米ニューヨーク(New York)で26日、現在の米国として独立する前の英国の北米植民地で最初に印刷された本である「ベイ詩編書(The Bay Psalm Book)」が1416万5000ドル(約14億3630万円)で落札され、世界でも最も高価な印刷本となった。競売大手サザビーズ(Sotheby's)が発表した。

「ベイ詩編書」はマサチューセッツ湾植民地と呼ばれた現マサチューセッツ(Massachusetts)州ケンブリッジ(Cambridge)に入植したピューリタン(清教徒)らが1640年に印刷した聖書の詩編書。

 600万ドル(約6億800万円)からスタートした価格は、数分後には1416万5000ドルに跳ね上がって落札された。サザビーズはこの本の価値を1500万~3000万ドル(約15億2000万~30億4000万円)と見積もっていた。落札者は明らかにされていない。

 これまでの印刷本の最高落札価格は、2010年12月に同じサザビーズで落札された、鳥類学者ジョン・ジェームズ・オーデュボン(John James Audubon)の鳥類図鑑「Birds of America(アメリカの鳥類)」の1150万ドル(約11億7000万円)だった。

■清教徒が植民地で印刷

「ベイ詩編書」は信仰の自由を求めて新大陸アメリカに渡った清教徒たちが、旧約聖書を原語のヘブライ語から独自に翻訳しものだ。サザビーズ書籍部長のデービッド・レッデン(David Redden)氏によれば、「その希少さは伝説的と言えるほどで、もう2世代もの間、市場には出ておらず入手が非常に困難な品」だという。

 さらにレッデン氏は、同書には米大陸で初めて書かれたとか印刷されたということ以上の価値があると話す。「1640年に印刷されたこの小さな本がレキシントン(Lexington)やコンコード(Concord)の戦い(英国軍と米植民地民兵との戦闘)の先駆けとなり、ひいては米国の政治的な独立につながった。これをもってニューイングランド(New England)は英国国教会から独立を宣言することになった」

 サザビーズ特別企画部のセルビー・キファー(Selby Kiffer)氏も、「単に本の歴史における偉大な象徴的1冊というだけではない。米国史における最も重要な文化財の1つだ」と同書を評価する。

■1700冊印刷され、現存するのは11冊のみ

「ベイ詩編書」の初版は1640年に1700冊印刷された。このうち11冊が現存し、米議会図書館(Library of Congress)やハーバード大学(Harvard University)の図書館などが所蔵している。

 今回の競売にかけられた1冊は、ボストン(Boston)のオールドサウス教会(Old South Church)が同市での活動費を捻出するために出品したもの。同教会は「ベイ詩編書」をもう1冊保有している。

「ベイ詩編書」が前回競売に掛けられたのは1947年。この時は今回とは別の1冊が、ヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gutenberg)が印刷した世界初の聖書「グーテンベルク聖書(Gutenberg Bible)」や英劇作家ウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)初の戯曲集「ファースト・フォリオ(First Folio)」を上回る、書籍としては当時の最高額だった15万1000ドル(約1530万円)で落札されていた。(c)AFP