【11月27日 AFP】国連(UN)の人権問題を扱う委員会は26日、国際的な批判を呼んだ米情報機関による各国首脳らの通信傍受疑惑を受けてドイツとブラジルが推進していた「プライバシー尊重の権利」を求める決議を採択した。

 決議では、政府や企業による情報収集やデータ傍受は「人権侵害の可能性がある」と述べられている。

 決議案はフランス、ロシアや北朝鮮を含む55か国が支持。特定の国家を名指しはしていないが、米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)を国際的な論争の渦中に置いたスパイ活動に、暗に言及している。

 ドイツとブラジルは、NSAがアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相の携帯電話や、ジルマ・ルセフ(Dilma Rousseff)・ブラジル大統領の通信を傍受していたとの報道がなされたことを受け、決議の採択を目指していた。これら疑惑は、米中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者が漏えいした情報に基づいたもの。

 ペーター・ウィッティヒ(Peter Wittig)独国連大使によれば、国連機関がオンラインでの人権問題で重要な「政治的メッセージ」を発したのは初めて。

「ファイブ・アイズ(Five-Eyes)」と称される情報活動協定を結ぶ米国とその同盟国の英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5か国も、当初決議案に含まれていた「外国による情報活動は人権侵害に当たる」との内容の文言が弱められたことを受け、決議に賛成した。

 世界でも最も厳しい情報統制を敷く北朝鮮は決議反対に回ることも予想されたが、決議案協議の場を米国の情報活動批判に利用。北朝鮮の申善虎(シン・ソンホ、Sin Son-Ho)国連大使は他国の人権問題を批判する米国の「偽善と欺き」を非難した。

 決議に拘束力はないが、続いて193の全加盟国が参加する国連総会で投票が行われる。(c)AFP