【11月21日 AFP】人類の「アフリカ起源説」では、ホモサピエンスは誕生の地である東アフリカを5万年ほど前に去り、北と西、南へと広まっていったとされる。東アジアに住み着いた子孫たちはその後、約1万5000年前にシベリア(Sibera)から凍り付いたベーリング海峡(Bering Strait)を越えてアラスカ(Alaska)に渡り、北米大陸に定住したとされてきた。

 だが、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された最新の研究によると、人類のたどった道はもっと複雑で、同じくらい興味深いものだった。

 2万4000年前のシベリアに生きていた子どもの骨から取り出したDNAの分析結果は、あらゆる予想を裏切るものだった。アメリカ先住民の祖先のルーツが、アジアの西端付近である西ユーラシアにもさかのぼることを示していたのだ。

 分析されたのは、シベリア中南部のマリタ(Mal'ta)で1920年代に発掘され、現在はサンクトペテルブルク(St Petersburg)のエルミタージュ博物館(State Hermitage Museum)に保管されている化石標本「MA-1」。

 MA-1のミトコンドリアと細胞の核から取り出されたわずか0.15グラム分のDNAサンプルからは、2系統の祖先の痕跡が発見された。一方は現代の東アジア人、もう一方は現代の西ユーラシア人に関連がみられた。同じ結果は、シベリアで発掘された約1万7000年前の別のサンプルでも確認された。

 論文は、アメリカ先住民の祖先の14~38%は西ユーラシアから来た人々を起源としていた可能性があると述べている。

 この発見は、人類の移住がこれまで考えられていたよりも複雑だったことを示唆している。北へ向かったホモサピエンスはその後、これまで考えられていたよりもはるか東へと移住していたようだ。

 また過去の研究で指摘されていた、初期アメリカ先住民の一部の頭蓋骨に東アジア人と異なる特徴が見られた点についても、説明が付くかもしれない。

 調査を率いたデンマークの地理遺伝学センター(Centre for GeoGenetics)のエスケ・ビラスリウ(Eske Willerslev)教授は「この結果は完全な驚きだった。東アジアから来たと学校で教えられてきた現代のアメリカ先住民が、最近まで西ユーラシア人と進化の歴史を共有していたなんて、誰が想像できただろう」と述べている。(c)AFP