【11月18日 AFP】南極の氷床の融解速度が増加している原因の一部は、南極大陸東部の氷の下の活火山にあるのかもしれないとの研究論文が17日、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に発表された。

 国連(UN)の気象学者らが9月に行った発表によると、南極氷床の平均年間消失量は2002年から2011年の間で約300億トンから約1470億トンに増加した。

 氷河の陸氷が大量に集まった氷床は、グリーンランド(Greenland)の大半や南極大陸などを覆っており、地球上の淡水の大半が含まれている。

 氷床は常に移動しており、それ自体の重みによって、下方の海の方向にゆっくりと流れている。氷床が海水の上にまで広がった部分は「棚氷」と呼ばれる。

 これまでの研究では、南極氷床の消失率が増加した原因は、南極大陸の周囲を循環して流れている海水の温度上昇にあるとされてきた。この説では、海水が棚氷を融解させ、棚氷が消失する量が増えるにつれて、氷床の流れが速くなり、氷床の氷が海に溶け出す割合も上昇するとしている。

 だが、米ワシントン大学(University of Washington)のアマンダ・ラフ(Amanda Lough)氏率いる地質学者チームは最新の論文の中で、南極大陸西部で氷床の流れが速くなっている要因は「火山」にもある可能性を指摘している。火山によって氷の下面が熱せられて融解することで、氷床の流れを円滑にしているかもしれないのだという。

 この説の証拠をもたらしたのは、最近導入されたセンサーだ。このセンサーは、2010年と2011年の2回にわたり、南極西部の高原地方のマリーバードランド(Marie Byrd Land)地下で発生した地震活動の「群発」を記録した。

 研究チームは、氷を透過するレーダーを使用して、同地方の地下1400メートルのところに、約1000平方キロの大きさの興味深い楕円(だえん)形の火山灰とみられる堆積物があるのを発見した。チームは、噴火以降の氷の堆積速度が年間12.5センチとの仮定に基づき、噴火の時期を約8000年前と推定している。

 こうした観測結果により、マグマ活動が現在も進行中であることや、火山活動が南方へ移動し続けていることを示す有力な証拠が得られたという。

 南極西部には複数の火山が存在することが知られていたが、これらはすべて活火山ではないと考えられていた。

「この場所で発生する噴火は、上部に堆積している厚さ1.2~2キロの氷を貫通する可能性は低いが、氷の移動に重大な影響を及ぼす可能性のある融解水を大量に発生させるだろう」とチームは述べている。(c)AFP