【11月16日 AFP】日本プロ野球と米大リーグの協議が行き詰まり、東北楽天ゴールデンイーグルス(Tohoku Rakuten Golden Eagles)の田中将大(Masahiro Tanaka)のMLBへの挑戦に暗雲が立ち込めている。 

 田中は今季のレギュラーシーズンで24勝無敗という成績を残し、チームを球団史上初の日本シリーズ制覇に導いた。オフシーズンに入り、25歳右腕の独占交渉権をめぐってMLBの球団による入札額の高騰が予想され、高額年俸で太平洋を渡ることが期待されていた。

 しかし、日本野球機構(Nippon Professional BaseballNPB)と米大リーグ機構(Major League BaseballMLB)の間では新ポスティング制度をめぐっての話し合いが暗礁に乗り上げており、田中の命運は危うくなっている。

 ダルビッシュ有(Yu Darvish)、松坂大輔(Daisuke Matsuzaka)、イチロー(Ichiro Suzuki)らが米大リーグ移籍の際に利用したポスティング制度無しでは、田中はFA権を行使するために日本でさらに2年間プレーする必要が出てくる。

 MLBのロブ・マンフレッド(Rob Manfred)最高執行責任者(COO)はMLBの公式サイトを通じて「われわれは日本側に提案をした。その際に迅速な返答が重要となることを伝えたが、残念ながら彼らは対応することができなかった」とコメントを発表している。

 今週、米フロリダ(Florida)で行われたMLBのオーナー会議では、日本側からの返答がなかったことを受けてMLB側の計画を改める方向性について話し合われた。

「会議では日本側に戻す必要のある議論もあり、われわれの提案についてさらなる話し合いを重ねた」とマンフレッド氏は主張した。

 ポスティング制度では、希望する選手との交渉権に対してMLBの各球団が球団名を伏せて入札を行い、最高入札額で落札した球団には一定期間の独占交渉権が与えられる。

 当該球団との契約が成立して移籍となれば、選手の売却代金として所属していた日本の球団に落札金額が支払われる。しかし、交渉が決裂した場合には入札金額も無効になる。

 新ポスティング制度では、最終的な落札金額は最高入札額と2番目の入札額の平均値となるため、MLB球団の負担は軽減される。さらに交渉の末、選手を獲得できなかった場合には落札した球団に対してMLBから罰金が科されるという変更点が加わったと、MLB公式サイトに基づいてジャパンタイムズ(Japan Times)紙は報じている。

 また米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、ポスティング制度における入札金額がぜいたく税の対象に含まれるとすれば、資金力が豊富にあり、田中に対しても高額で入札する構えを見せていたニューヨーク・ヤンキ-ス(New York Yankees)も再考していただろうというピッツバーグ・パイレーツ(Pittsburgh Pirates)のフランク・コネリー(Frank Coonelly)社長の見解を報じている。MLBでは、選手に支払う年俸総額が1億8900万ドル(約189億円)を超えた球団に対してぜいたく税と呼ばれる課徴金が発生する。

 同紙によると、入札額をぜいたく税の対象にするという提案はすでに選手会から却下されたことをマンフレッド氏が明らかにしている。

 市場規模が小さい球団は、地元テレビ局からの放映権料など二次的な収入源のあるヤンキースのように、市場規模が大きい球団が選手獲得にかける支出の拡大に歯止めがかかることを求めている。

 プロ通算99勝35敗の田中はMLB球団にとって今最も有望な日本人選手で、2012年シーズン前に鳴り物入りでテキサス・レンジャース(Texas Rangers)に移籍したダルビッシュ以来の熱視線が送られている。

 読売ジャイアンツ(Yomiuri Giants)と対戦した日本シリーズ第6戦で初黒星を喫するまで、無傷の30連勝を飾っていた田中は、160球を投げたその翌日の第7戦では9回に救援登板してチームを日本一に導いた。

 ポスティング制度が消滅すれば、過去に松井秀喜(Hideki Matsui)や上原浩治(Koji Uehara)が辿ったようにFA権を獲得するまでしばらく待たなければならなくなる。

 レンジャースは史上最高となる落札額5170万ドルを北海道日本ハムファイターズ(Hokkaido Nippon Ham Fighters)に支払い、6年総額約6000万ドルでダルビッシュと契約している。(c)AFP