【11月7日 AFP】男性ホルモン「テストステロン」の補充療法を受けた中高年男性は、心臓発作や脳卒中、死亡のリスクが高まるとの研究報告が5日、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)に発表された。

 研究は、テストステロンの分泌が少ない男性8700人超を対象に行われた。このうち1223人はテストステロンの補充療法を受けた男性で、平均治療期間は約2年。

 研究開始から3年後、ホルモン療法を受けていないグループの5人に1人近くが心臓発作や脳卒中を患ったり、死亡したりした。一方、補充療法を受けたグループではこの割合が4人に1人だった。

 米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のアン・コッポラ(Anne Cappola)氏は、ホルモン療法を受けたグループの男性は、受けていないグループよりも「初めは若干健康だった」ことから、リスクの増加は特に注目すべき点だとしている。また、ホルモン療法を受けたグループの平均年齢は61歳で、受けていないグループ(平均64歳)よりも若かった。

 研究を行った米テキサス大学(University of Texas)のレベッカ・ビガン(Rebecca Vigan)氏などのチームは研究報告の中で、「今回の結果はテストステロン補充療法の安全性に疑問を呈するものだ」と指摘している。

 研究報告によると、米国ではテストステロン補充療法の年間処方件数は2000~2011年に5倍に増加し、530万件に達した。金額にして16億ドル(約1580億円)前後に上る。

 この治療法は、テストステロンの減少に伴う性欲減退、精力減退、記憶力の低下などの症状がみられる男性に対し推奨されている。(c)AFP