【11月6日 AFP】スイスの銀行が米国人顧客の脱税を手助けした問題で、米当局が捜査しているのを受け、スイスの銀行関係者の多くは海外に行くのを恐れているという。

 スイス・米国商工会議所(Swiss-American Chamber of Commerce)のマーティン・ナビル(Martin Naville)会頭はAFPに、「米国人顧客と直接関わったスイスの銀行家、関係者は数百人、最大で1000人程度いるとみられており、米国への旅行はもとよりスイスから出国することさえ恐れている」と話した。弁護士のダグラス・ホーナング(Douglas Hornung)氏はこの人数は妥当だろうとした上で、「かつてスイスの金融機関の米国部門で働いていた人たちは、役職に就いていなかった行員も含め、国外へ行くのを恐れるだろう」と述べた。

 スイスの銀行は米国人の顧客から数百億ドル(数兆円)の脱税資産を集めてきたとみられており、米当局の捜査を受けている。スイス政府は最近、米国人顧客の口座情報の提供について米当局と合意。脱税を手助けした銀行関係者の情報も米当局の手に渡ることになる。

 米国は捜査中の銀行関係者の名前を公表していないが、スイスのメディアによると、少なくとも24人が既に起訴され、今後、他の関係者も本人が知らぬ間に、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール、Interpol)の指名手配リストに加えられる可能性があるという。

 2008年に約200億ドル(約1兆9700億円)の資産隠しに関与した罪で米連邦大陪審に起訴されていたスイス金融大手UBSの国際資産管理サービス部門の元会長ラウール・ワイル(Raoul Weil)被告(54)は10月、イタリアで突然逮捕された。

 弁護士のホーナング氏は、「ワイル被告は何年も前のことで米当局が捜査を続けることはないし、インターポールの指名手配リストに自身の名が載ることなど絶対にないと思っていたのだろうが、それは全くの見当違いだった」と話し、ワイル被告の逮捕で銀行関係者の不安は増幅するだろうと述べた。

 スイス銀行従業員組合(Swiss Bank Employees Association)のドゥニーズ・シェルベ(Denise Chervet)氏はAFPに、一部の銀行従業員に対して「外国には行かないように。少なくとも飛行機での外国旅行は禁止。ホテルにチェックインするのも禁止」と伝えたことを認めた。(c)AFP/Nina LARSON