【11月4日 AFP】ドイツ南部ミュンヘン(Munich)にあるアパートの1室から、第二次世界大戦前~戦中にかけてナチス・ドイツ(Nazi)がユダヤ人から略奪した絵画1500点近くが見つかった。独週刊誌フォークス(Focus)が3日、報じた。見つかった作品の中には、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)やアンリ・マチス(Henri Matisse)のものも含まれており、時価総額で10億ユーロ(約1330億円)相当の価値があるという。

 フォークス誌によると絵画は2011年、脱税容疑でこの部屋に警察の家宅捜索に入った際に発見された。部屋の所有者のコルネリウス・グルリット(Cornelius Gurlitt)容疑者は、父親がナチス幹部と親しかった美術収集家のヒルデブラント・グルリット(Hildebrand Gurlitt)氏で、今回見つかった絵画は1930~40年代に同氏が入手したものだという。

 見つかった絵画は、アパート内の薄暗い室内で古いジャムの瓶やがらくたと一緒に50年以上にわたって隠されていた。グルリット容疑者は無職で隠遁生活を送っており、これまでに絵画数点を売却し、その売り上げで生活していたという。

 父親のヒルデブラント・グルリット氏は祖母がユダヤ人だったが、美術品の審美眼と人脈の広さからナチスの「第三帝国(Third Reich)」の幹部たちにとって必要な人材となった。当時のヨーゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)宣伝相は、ナチ党が退廃的だとみなした芸術作品(退廃芸術)の売買責任者にグルリット氏を任じた。

 ナチスは当時、ドイツや欧州各地でユダヤ人の所有する美術品を多数、没収したり買いたたいたりして略奪した。フランスでは1940年~44年、絵画、芸術作品、タペストリー、古美術品など計10万点が、ナチス占領下の政権によって定められた人種差別的な法律の下でユダヤ人から没収された。(c)AFP