【11月5日 AFP】ドイツで子どもの就学を遅らせる親が増えている。ドイツ連邦統計局(Destatis)によると、2011-12年度に小学校に入学した児童の6%は就学時期を延期した子どもで、うち3分の2は男児だった。一部地域ではこの割合がさらに高いという。

 ある母親は、息子の就学を1年遅らせた。6歳になる直前に入学する予定だったものの、「自分で自分のことが全くできず、何かできないとすぐ不機嫌になる」(母親)ため、息子を幼稚園に1年長く通わせた。母親はAFPに対してこの判断は正しかったと語り、「今は学校に適応している」と強調した。

 15年前にドイツ当局は、子どもが6歳の誕生日を迎える暦年に就学年齢を前倒しする方針を打ち出した。他の欧州諸国に歩調を合わせるとともに、差し迫る労働力不足に対応するのが狙いだった。多くの場所では高校の通学期間も1年間短縮された。

■親が学校生活のストレスやプレッシャーを懸念

 しかし、こうした全国的な学校制度の改革は、秩序だった学校生活のストレスや緊張に直面するのは自分の子どもにとってまだ早いと考える親の反対意見を織り込んでいなかった。

 南部ミュンヘン(Munich)にある学校問題相談所のヘルガ・ウルブリヒト(Helga Ulbricht)所長は「学校のストレスやプレッシャーについていろいろ聞くと親は急に、自分の子どもにそうしたものを背負わせることにならないか自問自答する」と指摘する。

 この相談所があるバイエルン(Bavaria)州では、就学を延期した児童の割合が12%に上っている。同州はこうした親の一種の抵抗を受け、6歳を迎える年に就学させる方針を断念せざるを得なくなった地域の一つだ。6歳就学が当たり前となっているのは、今や首都ベルリン(Berlin)など一握りの地域に限られている。

 この件について専門家の意見は分かれている。ハンブルク大学(Hamburg University)のペーター・シュトルク(Peter Struck)名誉教授(教育学)は、就学年齢が早ければ早いほど学習能力が高まると主張する。ただし、言葉をまだ十分に使いこなしていない子どもや発達が遅れている子どもは、就学延期が効果的な場合もある点は認めている。

 一方、言語障害を専門とするバイエルン州の教育学者ベアーテ・ケーグラー(Beate Koegler)氏は、親の不安は「大げさではない」という。子どもが集中的な支援を必要としている分野に親が注意を払い、翌年からの入学準備が十分できるなら、就学延期を支持するとの考えを示した。

 ただし、一部の親にとってはイメージの問題なのかもしれない。バンベルク大学(Bamberg University)の教育学研究者カタリナ・クルチニク(Katharina Kluczniok)氏は、学校とは「子ども時代の終わり」だという批判的な認識を持っている親が多いと述べる。子どもが宿題や過密な時間割りに縛られるようになる前に「親の方が、もう1年猶予期間を求めていることも考え得る」という。

 学校問題相談所のウルブリヒト氏も、子どもの就学が親にとっても大きな変化になり得るといい「『用意ができた』と認識することは、親にとって思い切りの要る一歩だ」と述べている。(c)AFP/Mathilde RICHTER