【11月2日 AFP】西アフリカのニジェールでサハラ砂漠を越えようとして、飲み水がなかったために死亡したとみられる92人の遺体が発見された。大半は女性と子どもだという。

 10月30日に遺体となって見つかったのは子ども52人、女性33人、男性7人。難民たちが乗っていたトラック2台は、アルジェリアへ向かう途上で立ち往生したとみられ、遺体はすでに分解が進んでいた。

 ニジェール政府は公共放送を通じた声明で「この悲劇はあらゆる種類の人身取引に関わるネットワークが起こした犯罪の結果だ」と非難した。またこの事態を受け、同国北部の中心都市アガデス(Agadez)にある「ゲットー」と呼ばれる難民キャンプの閉鎖を命じたという。さらに政府は、多くはニジェール北部を通ってアルジェリアやリビアへ向かう難民の移動を請け負う業者を「厳しく罰する」と宣言した。

 3日間を服喪期間としたニジェールの政府庁舎などでは半旗が掲げられた。政府の声明によるとブリジ・ラフィニ(Brigi Rafini)首相は、今回遺体で発見された人々の多くの出身地である南部のKantcheを訪れ、犠牲者の遺族に哀悼の意を伝える予定。ニジェールは極度の貧困で知られており、犠牲者は全員同国南部からアルジェリアに向かっていた。難民キャンプのあるアガデスのリサ・フェルトゥー(Rhissa Feltou)市長は、死亡した人々は「地中海での(難民船の沈没)事故など、あちこちで見られるのと同様の難民だ」と語った。

■容赦なく命を奪う砂漠の渇き

 サハラ砂漠から国境を越えてアルジェリアへ入ろうとしていた2台のトラックに乗っていた難民は計113人で、生き残ったのはわずか21人だった。フェルトゥー市長によれば、トラックは2台ともほぼ同時に故障したとみられ、そのため飲み水が不足し、死に至ったようだという。同市長は「砂漠では喉の渇きは容赦ない。体力があれば3~4日は生き延びることができるかもしれないが、大抵は24~48時間で死んでしまう」と説明する。

 非政府団体「Aghir In'man」(サハラ砂漠の遊牧民トゥアレグ(Tuareg)の言葉で「人間の盾」の意)のアルムスタファ・アルハセン(Almoustapha Alhacen)氏によると、遺体は半径約20キロ以内の範囲で少人数のグループごとに見つかった。

 治安関係筋は、難民たちはトラックのそばで5日間ほどは生存していたとみられ、その後、水場を探すためにトラックを離れたのではないかとしている。今回の移動を率いたニジェール南部出身の女1人が、アルジェリアの砂漠にあるオアシス都市タマンラセト(Tamanrasset)で治安部隊に拘束されたという。

■毎月5000人以上が砂漠に

 サハラ砂漠で大勢の難民が死亡した事件としては、2001年5月に当時多くの仕事があると考えられていた故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の独裁政権下のリビアに向かっていた140人が水を飲めずに死亡した例がある。

 2011年にカダフィ政権が倒れて以降、難民たちの間ではアルジェリアへ向かうよりも、アガデス経由でリビアへ向かい、そこから欧州へ渡るルートの方に人気があるという。国連(UN)によれば今年3月から8月まで、アガデス・ルートを通った西アフリカ出身の難民は毎月5000人を超え、その多くがニジェール出身だったという。

 貧困や暴力から脱しようとする人々を支持し、また人身売買に反対を表明しているローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王は1日、バチカンのサンピエトロ広場(St Peter's Square)で、「よりよい生活環境を求める途上で飢えや渇き、疲労で命を落とした全ての兄弟姉妹」のために祈るよう世界中の信徒に呼び掛けた。(c)AFP