【10月21日 AFP】東京電力(TEPCO)福島第1原発事故を受けその安全性に大きな懸念が生じた原子力だが、アジア圏における原発の新設計画にはさほど影響しておらず、圏内での今後のエネルギーミックスはさらに原発に依存するものとなっている──。

 韓国の大邱(Daegu)市で先週開かれた世界エネルギー会議(World Energy CongressWEC)に出席した専門家らは、中国とインドを中心としたアジア諸国が今後20年間、世界の原子力産業を引き続きけん引するものとみている。

 国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)の天野之弥(Yukiya Amano)事務局長はAFPに対し、「今後、原子力エネルギーは世界的に増えていくが、アジア、特に中国とインド、韓国はその中心となる」と述べた。

 IAEAの年次報告書によると、世界の原子力エネルギーは主にアジアでの伸びにけん引され、2030年までに2倍近くに拡大する見通しだ。現在、世界の原発は約430基に上る。天野事務局長は、新設中の原発70基のうち50基がアジアに集中していると説明した。

 中国には現在17基の原発がある。さらに30基が建設中で、計画段階にあるものも59基ある。専門家らは、長期的には太陽光や風力など再生可能エネルギーの割合が増加するとの見通しを示しているが、目下の経済成長と急速な都市化によるエネルギー需要の急増を背景に、同国政府は原発依存を止められないと指摘した。

 アジア第3の経済大国で電力不足に苦しめられているインドも、原子力開発に意欲的だ。同国は原発20基を保有している。そのほか7基が建設中、計画段階にあるのが18基となっている。2030年までに原子力発電量を6300万キロワットに引き上げ、これを含めて総発量を現在の水準の約15倍とする計画だ。原子力はジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元米大統領が08年にインド政府と民生用原子力協力協定を結んで以降、インドのエネルギー政策で最重要課題となっている。

 韓国では原発部品の性能証明書の偽造が多発したため、原子力業界は国民からの信頼を回復できず苦戦を強いられており、福島原発事故後の不安に輪をかけている。韓国では現在の23基から、30年までに新たに16基の原発を建設する計画だ。

 WECに出席した日本の関係者らは、日本では今後も原子力が発電エネルギーの一角を占めると明言した。日本では福島での事故後、国内の商用原子炉50基全てが運転を停止。2012年7月に2基が再稼働したものの、今年9月には定期検査のため再び停止した。現時点で国内で稼働している原発はない。

 安倍晋三(Shinzo Abe)首相は原発再稼働の方針を公言しているが、反対派は安全面の懸念が払しょくされていないと強く批判しており、国内の世論は割れている。(c)AFP/Park Chan-Kyong