【10月18日 AFP】グルジアで発見された、驚くほど保存状態の良い180万年前の頭蓋骨は、初期人類が幅広い外見的多様性を持つ単一種であることの新たな証拠を示しているとの研究論文が17日、米科学誌サイエンス(Science)で発表された。

 グルジア国立博物館(Georgian National Museum)館長のデービッド・ロードキパニジェ(David Lordkipanidze)氏率いる研究チームが発表した論文によると、グルジアのドマニシ(Dmanisi)にある中世丘上都市の遺跡で発見されたこの頭蓋骨は、類人猿のような突き出た額と張り出した顎を持ち、脳の大きさは現生人類の約3分の1と小さいという。

 首都トビリシ(Tbilisi)から約100キロの距離にあるこの遺跡では、これまでに初期人類の頭蓋骨が今回のものを含めて5個発見されており、そのうちの4個には顎の骨も見つかっている。また、食肉解体処理を行っていたことをうかがわせる石器や、巨大なサーベルタイガー(剣歯虎)の骨も同時に出土している。

 論文の共著者、スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)のクリストフ・ツォリコファー(Christoph Zollikofer)氏は、これらの頭蓋骨は外見が大幅に異なるため、別の状況では異なる種のものと見なされていたかもしれないと指摘する。「けれども、これらの個体は同じ場所と同じ地質時代に由来することがわかっているので、原則上は、単一種の単一個体群を示す可能性があるものと思われる」

 研究チームは、頭蓋骨の特徴にみられるばらつきを比較して、顎、額、頭蓋骨の形状はそれぞれ異なるが、その特性はすべて、同一の種に属すると見なされる基準の範囲内にあることを明らかにした。

 ツォリコファー氏は「ドマニシの5つの個体は、互いに明らかに異なっているが、特定の個体群に属する5つの現生人類の個体や5つのチンパンジーの個体よりも個体差は大きくない」と述べている。「1つの種の範囲内にある多様性は、例外ではなくて規則であるという結論にわれわれは達している」

 この仮説の下では、一部の専門家らが唱えている、アフリカに異なる種族が存在するとする説の「ホモ・ハビリス(Homo habilis)」や「ホモ・ルドルフエンシス(Homo rudolfensis)」などはすべて、だだ外見が互いに異なるだけの「ホモ・エレクトス(Homo erectus)」種の古代人ということになる。

 また、アフリカで最初に発見された、現生人類のヒト属に属する初期の人類が、脳が小さいにもかかわらず、すぐにアジアに拡散していったことをこの仮説は示唆している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN