【10月13日 AFP】米陸軍で、高度な先端技術を駆使した歩兵用ボディーアーマーの研究開発が進められている。兵士に「超人的な力」を与える、映画『アイアンマン(Iron Man)』シリーズに登場するような武装スーツが現実のものになるかもしれない。

 複数の関係者によると、このボディーアーマーはTactical Assault Light Operator SuitTALOS)と呼ばれ、その青写真には兵士の身体に装着して重い装備の携行を可能にする装置や、内蔵コンピューター、防弾性能の強化、生命兆候(バイタルサイン)の監視システムが盛り込まれている。米国の海軍特殊部隊(SEALs)や陸軍特殊部隊(Army Ranger)を管轄する米特殊作戦軍(US Special Operations CommandUSSOCOM)は先月、「スマート」な戦闘スーツへの応用が期待できる技術の研究論文を募集した。

 米陸軍研究開発技術コマンド(Research, Development and Engineering CommandRDECOM)のロジャー・ティール(Roger Teel)報道官がAFPに語ったところによると、論文の提出期限は来年9月。その後、軍と国防当局が、国防予算圧縮への圧力が高まっている中どのように開発を進めるか検討する。

 TALOSには、映画『ターミネーター(Terminator)』をほうふつとさせる「リキッドアーマー(液体防護具)」というものが使われる可能性がある。電荷や磁荷を受けると固体になる特殊な液体を利用するもので、現時点ではまだ開発の初期段階。ティール報道官は「開発を検討しているリキッドアーマーがある」とした上で、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)の科学者が研究を進めており「電池式のスイッチで作動するものになるかも知れない」と付け加えた。

 陸軍は武装スーツのおおまかなデモンストレーションアニメを公表。SF的な装備を身に着けて戸口に立った兵士に向けて何者かが至近距離から銃を撃つが、銃弾はことごとく跳ね返される。おどろおどろしい音楽が流れる中、映画やドラマで定番の「To be continued(続く)」のテロップが画面に表示される──という内容だ。

 成功した兵器開発プログラムの例は少ないが、関係者らは、今回の野心的なプロジェクトは神話や映画の話のように聞こえるかもしれないが、決して手が届かないものではないと強調。例えば、ヘルメットに搭載したディスプレーに戦場にいる兵士たちのバーチャル映像を表示させるという概念は、F35戦闘機のパイロット用として既に開発が進んでいるハイテクヘルメットと似ている。

 TALOSはロボット工学とコンピューターの進歩を背景に、「マン・マシンインターフェース(人間と機械の情報のやり取り)」を重視する最近の研究の流れの中にあり、個々の兵士の能力を劇的に高めることを狙っている。(c)AFP/Dan De Luce