【10月12日 AFP】現在の欧州圏で暮らしていた狩猟採集民と農耕民は、約2000年にわたって共存し、時に混血する場合もあったとする遺伝学研究の論文が10日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。この研究は、農耕民が短期間で狩猟採集民に取って代わったとするこれまでの説を覆す内容となっている。

 発表された2件の研究によると、共存はこれまで考えられていたよりもかなり遅い約5000年前まで続いていたとされる。

 1番目の研究は、独ミッテレルベ・ザーレ(Mittelelbe-Saale)地域25か所の発掘現場で見つかった古代人の遺骨364人分から採取した遺伝子のデータを基に行われた。古代人の遺伝子データとしては過去最大規模を誇るという。2番目の研究は、独ウェストファーレン(Westphalia)地域にある洞窟で見つかった古代人の遺骨25人分から採取した遺伝子を調査した。

 ヨハネス・グーテンベルク大学(マインツ大学、Johannes Gutenberg University)人類学部の研究者らによると、狩猟採集民も農耕民も現代中央ヨーロッパ人の唯一の祖先ではないという。

 穀物栽培や家畜飼育を行い、陶器も作っていたとされる農耕文化が中近東から中央ヨーロッパに広がったのは約7500年前。この農耕民は、遭遇した狩猟採集民を短期間で消滅させたと考えられてきた。しかし今回の調査の結果、狩猟採集民と農耕民は以降約2000年間にわたって共存を続けたことが示された。

 また論文の主著者、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ(Johannes Gutenberg-Universitat Mainz、マインツ大学)のヨアヒム・ ビュルガー(Joachim Burger)氏によると、狩猟採集民の女性が「妻」として農耕民のコミュニティーに入ることもあった。一方、農耕民女性の遺伝系列は、狩猟採集民のグループでは確認できなかった。

 こうして、この地域の狩猟採集文化は約5000年前に消滅し、農耕文化が置き換わったという。研究チームによれば、現代ヨーロッパ人の約30%が初期農耕民の遺伝子を持っているとされ、残りの人口は、もっと最近になって他地域から入って来た人々から構成されているという。(c)AFP