【10月7日 AFP】創意あふれる研究でノーベル賞を獲得した受賞者たちは、賞金の使い方においてもしばしば独創性を発揮する──。

 例えば、2001年にノーベル医学生理学賞を受賞したサー・ポール・ナース(Paul Nurse)は賞金でオートバイを買い替え、1993年にノーベル医学生理学賞を受賞した英国のリチャード・ロバーツ(Richard Roberts)氏は、自宅前の庭にクロッケー(英国の球技)用の芝を植えた。2004年にノーベル文学賞を受賞したオーストリアの作家エルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek)氏は同賞が「経済的自立」を意味すると語った。

 今年のノーベル賞は7日の医学生理学賞の発表から始まり、来週の経済学賞で幕を下ろす。

 メディアの殺到や公式行事、式典への出席が終わると、ノーベル賞受賞者たちは、賞金800万クローナ(約1億2000万円)の使い道を考えることになる。なお賞金の金額は、世界的な金融危機の余波で2012年に20%減額されている。

■傾向はないものの、人気は不動産購入

 ノーベル財団(Nobel Foundation)のラーシュ・ヘイケンステン(Lars Heikensten)専務理事によると、受賞者たちの賞金の使い道に明確な傾向はないというが、それでも不動産購入は人気の選択肢だという。

 1億円以上の賞金は一見大金にみえるかもしれないが、複数の受賞者の間で分割されることも多い。2001年にノーベル物理学賞を2人の研究者とともに受賞した米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)のボルフガング・ケターレ(Wolfgang Ketterle)氏は、賞金を住宅購入と子どもの教育費にあてた。

「米国では半分を税金として納めるので、余ることはなかった」とケターレ氏は語った。

 1993年の医学生理学賞を受賞した米国のフィリップ・シャープ(Phillip Sharp)氏は、築100年を超すフェデラル様式の住宅購入に賞金を使った。

 だが、新たな受賞者たちは会議や講演などにしばらく引っ張りだこになることから、賞金の使い道を決めるまでには時間がかかることが多い。2012年にノーベル物理学賞を受賞したセルジュ・アロシュ(Serge Haroche)氏は「とても忙しくて、まだ賞金のことは考えられないでいる」と述べていた。

■ノーベル平和賞受賞者の使い道

 常に公衆の監視の目にさらされる政治家や団体、活動家らが受賞することの多いノーベル平和賞では、受賞者たちの賞金の使い道は明確な場合が多い。2009年に受賞したバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領や2012年の欧州連合(EU)のように、多くの受賞者は賞金を慈善団体に寄付する。

 長年温めてきた計画に賞金を使う受賞者もいる。2008年に同賞を受賞したフィンランドのマルッティ・アハティサーリ(Martti Ahtisaari)元大統領は、自ら設立した紛争解決団体に賞金を投じると述べた。

 また貧困層に無担保の小口融資を行うグラミン銀行(Grameen Bank)創設者のムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)氏は、2006年の平和賞の受賞賞金を眼科病院の設立と貧困層の手に届く食料を生産する事業に投資すると表明していた。

 だが1920年に平和賞を受賞した米国のウッドロー・ウィルソン(Woodrow Wilson)元大統領のような例外もいる。当時の大統領職には年金制度がなく、ある伝記によると、老後の生活を不安視したウィルソン元大統領は、利子目的で賞金をスウェーデンの銀行に預けたままにしたという。

■文学賞受賞者には「経済的な助け」

 ノーベル文学賞受賞者たちは賞金の使い道について公表しない傾向があるが、使い道ははっきりしている。賞金により数年間は食べることに困らなくなり、作家活動に専念することができるのだ。

 スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)のノーベル文学賞研究者、アンナ・ガンダー(Anna Gunder)氏は「ノーベル賞受賞作家はたとえ知名度があっても、文筆業で多くの稼ぎがない人が多い」と述べている。(c)AFP/Tom SULLIVAN