【10月3日 AFP】これまで地震がほとんど起きていなかったスペイン東部バレンシア湾(Gulf of Valencia)沿岸で最近、小規模な地震が多発している。スペイン国土地理院(National Geographic InstituteIGN)によると、9月に観測された地震は300回以上。環境保護団体と地質学者は2日、地震の原因は6月に稼働を開始した沖合の天然ガス貯蔵施設だとの見解を発表した。

 今月1日未明には、これまでで最大となるマグニチュード(M)4.2の揺れが記録された。建物への被害や負傷者は出ていないが、地元住民らは驚きおびえている。

 海上にガス貯蔵施設を望むバレンシア湾岸の町ビナロス(Vinaros)で店舗を経営する女性(55)はAFPの電話取材に、地震で飛び起きたと話した。「電車が頭上を飛び越えていったかと思うほど窓が揺れた。まるで、とても長い列車が通り過ぎて行ったみたいだった」

 2日には、M1.4~M2.9の地震が10回起きている。

■枯渇ガス田を利用した貯蔵施設、近くに断層

 スペイン企業エスカルUGS(Escal UGS)が所有・運営するカストル(Castor)天然ガス貯蔵施設は、地中海の海底1.7キロの深さにある枯渇した石油貯留層を利用して天然ガスを貯蔵し、パイプラインで国内の発電網にエネルギーを供給するというもの。総貯蔵量は約13億立方メートルで、バレンシア州全域のエネルギー需要を3か月まかなえる。

 地震の多発を受けてスペイン政府は先月16日、専門家が揺れの原因を調査する間、貯蔵施設への天然ガスの圧入停止を命じた。6月の稼働開始から政府の停止命令までに、およそ1億立方メートルのガスが施設に圧入されている。

 政府は地震とガス圧入との関連は証明されていないとの立場だが、環境保護団体「Ecologists in Action」は2日、「関連があるのは間違いない」とする声明を発表した。

 また、スペイン地質学協会のルイス・スアレス(Luis Suarez)会長は、問題の貯蔵施設の近くに断層が存在することと、これまで同地域では地震活動はほとんどみられなかった点を指摘。「地震とガス圧入に関連があると考えるのが合理的だと示唆する点が幾つかある。断層にたまったエネルギーが、ガス圧入をきっかけに解放されているのではないか」と述べた。

 スアレス会長によれば、この地域で強い地震が発生する可能性は「非常に低い」という。(c)AFP/daniel bosque