【10月1日 AFP】死んだアナグマ1匹を用意して小麦粉と香草をまぶし、鍋に入れて調味料を加えて煮込むこと5時間、おいしいシチューの出来上がり。これが、英国人の「ロードキル・イーター(roadkill eater)」ことアーサー・ボイツ(Arthur Boyt)さん(74)が編み出した最高のレシピだ。

 ボイツさんは、道路脇に横たわる死んだ動物を拾い上げて自宅に持ち帰り、皮を剥ぎ、内臓を取り出して調理する。犬や猫からイタチやネズミに至るまで、これほど美味なものは他にないとボイツさんは話す。

 元研究者で自然崇拝者のボイツさんが暮らすイングランド南西部コーンウォール(Cornwall)州の自宅には、動物の頭蓋骨やはく製があちこちに飾られている。1960年代から車にひき殺された動物を食べるようになったボイツさんは、もっと多くの人に食べてもらいたいと話す。

「私が『車にひき殺された動物を食べるんだ』と言うと、みんなに『えー、本当かい?』と言われるんだ。だから、『君たちも食べてみればおいしいことが分かるよ』って言ってやるのさ」。AFPが取材に訪れた日も、ボイツさんの台所ではアナグマのシチューがコトコトと煮えていた。

 ボイツさんによると、動物の死肉を食べることに嫌悪を感じるのは、味ではなく頭で判断するからだという。「こういうものを食べるときには、敷居をまたがなければならん。『大丈夫、ただの肉さ』と思うことが肝心だ」

 ボイツさんの好物は「犬」だという。これまでに、車にひかれた雑種2匹とラブラドール1匹を食べた。犬肉の味は柔らかくまろやかで甘味もあり、子羊の肉に似ているという。キャンティなどの赤ワインと相性がいいという。「もちろん食べる前に飼い主を捜すようにしているよ」とボイツさんは話す。

 犬が好物だというボイツさんだが、離れ家にある冷凍庫は、猛禽類からトカゲに至るまでさまざまな動物の肉でいっぱいになっており、ボイツさんの好みが多様であることをうかがわせる。

 ボイツさんはまた、腐肉を食べることにも抵抗はない。死後2週間経ったアナグマの肉でも、ウジやマダニを取り除いてから鍋に入れて煮込むので問題ないという。「濃い緑色に変色してしまって匂いがきつい肉も食べたことがある。きちんと火を通せば、肉を食べる楽しさは邪魔されないさ」

 車にひかれた動物の肉を食べて病気になったことは1度もないとボイツさんはいう。食事に招いた友人らの具合が、帰宅後に悪くなったことがあったが、それは別の理由だとボイツさんは信じている。

 英国では、故意ではなく事故でひき殺された場合に限り、路上で死んだ野生動物を食べることが通常、法律で認められている。

 ボイツさんは、偶然ひかれた動物しか食べない。自分で見つけることもあるが、ヤマネコの亡霊が出るという噂がある原生林ボドミンムーア(Bodmin Moor)付近の住民に教えてもらうこともあるという。

 アナグマのシチューの仕上げをしたボイツさんは、車でひき殺された動物を料理するのは、菜食主義の妻が外出したときだけだと明かした。妻が週に1度、母親の家に泊まりに行く日が、ボイツさんにとってご馳走を食べる絶好の機会なのだという。(c)AFP/Katherine HADDON