【9月27日 AFP】ブラジル最大の都市サンパウロ(Sao Paulo)の中心部、ジャルジンス(Jardins)地区の通りに立ち並ぶ美容サロン5店の中でもひときわ目立つのが、男性客専用サロン「ミスター・ジャルジンス(Mr Jardins)」だ。

 昔ながらの散髪とひげそりに訪れる客もいるが、女性顔負けのトリートメント──脱毛やウエスト痩身(そうしん)エステ、若返りのためのフェイシャルリフト、美肌エステ、さらにはマニキュアやペディキュアを求めて来る客もいる。

 好景気のブラジルの美容業界にとって男性は新しいターゲットだ。サービスも製品も、もはや女性だけのものではない。「ミスター・ジャルジンス」のオーナー、グレゴリオ・メンデス(Gregorio Mendes)氏によれば「毎日」新しい客が散髪にやって来て、最後は他のサービスも利用している。

「成長市場だ」というメンディス氏は、中南米で今も根強い「マッチョ主義」について触れ、「脱毛をする男性は男らしくないといった誤解は消えつつある」と語った。「あらゆる年齢の男性が来る。自分で来る男性も、妻やガールフレンド、娘に連れられて来る男性もいる。ゲイとかストレートといったことでもない。大事なのは、見かけを良くしたいと思うことだ」

 ブラジル衛生関連商品・香水・化粧品協会(ABIHPEC)によると、好景気によって新たに4000万人が中間層に加わったことを背景にブラジルの美容産業は過去10年間、毎年10%成長を遂げている。

 昨年のブラジル美容市場の売上高は420億ドル(約4兆1500億円)で世界の美容市場の10%を占め、米国、日本に次ぐ世界第3位につけている。中南米最大、世界で3番目に大きいと主催者がうたう美容関連の製品見本市が今月初旬、サンパウロで開かれたが、まとまった取引額は2億ドル(約200億円)を超えた。

 業界関係者によれば男性向け製品も、ヘアカラーやカラーシャンプーから艶消しマニキュア、ひげの手入れ用製品、保湿液、脱毛クリームなど挙げ切れないほど充実している。

 また来年開催される2014年サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)に合わせ、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(Procter and GambleP&G)が発売したばかりのフケ予防シャンプーの広告にリオネル・メッシ(Lionel Messi)氏やペレ(Pele)氏といったサッカー選手や元選手を起用する動きもある。

「ミスター・ジャルジンス」のオーナー、メンデス氏が抱える今最大の悩みとは、男性のための美容サービスの訓練を受けた男性エステティシャンがいないことだという。「もっとプロフェッショナルが要る」とメンデス氏は嘆いてみせた。(c)AFP/Natalia RAMOS