【9月27日 AFP】人間の手で絶滅のふちに追いやられていた欧州の野生動物や野鳥の一部について、保護の取り組みが進んだ結果、この50年間で個体数が劇的に回復したとの報告書が26日、発表された。動物保護関連ではめったにない良い知らせだ。

 英ロンドン動物学会(Zoological Society of London)、国際環境NGOバードライフ・インターナショナル(BirdLife International)、欧州野鳥調査評議会(European Bird Census Council)が欧州各地の研究者の協力を得てまとめた報告書によれば、絶滅危惧種だったヨーロッパバイソン、ユーラシアビーバー、カオジロオタテガモ、コザクラバシガンの一部では個体数が3000%も急増したという。

 調査対象の哺乳類18種のうち17種で増加が確認され、ヒグマは倍増し、タイリクオオカミは4倍に増えた。これらの17種では、20世紀半ば以降の欧州における生息域も約30%拡大していた。また、調査対象となった鳥類19種の全てが個体数を回復した。

 個体数が減少していたのは、スペインオオヤマネコだけだった。

■依然として失われつつある多様性

 欧州には現在、陸生哺乳動物219種と鳥類530種が生息している。長年にわたる見境のない狩猟、密猟、毒殺に加え、農耕、放牧、環境汚染や森林伐採によって生息地を失い続けた結果、欧州の生物種の多くは1950~60年代に個体数が史上最低水準にまで減少した。

 報告書は、一部の種での保護努力の成果を称賛する一方で、全体的な生物多様性は依然として失われつつあると警告。「野生生物の復活は、慎重に評価する必要がある」「複数の種で回復がみられるとはいえ、多くはまだ歴史的な生物種豊富度を下回っており、長期的に持続可能な個体数を確保できる水準にはまだ達していない」と指摘している。

 個体数が減少しつつある生物種は他にも数多く存在する。報告書によれば、魚類、爬虫(はちゅう)類、哺乳類、鳥類の個体数は1970年以降、地球全体で約30%減少した。哺乳類の個体数は平均25%減、鳥類は同8%減という。

 この期間に人類の世界人口は倍増し、2011年に70億人に達している。(c)AFP