【9月26日 AFP】米国家安全保障局(National Security Agency NSA)がベトナム戦争(Vietnam War)さなかの1960年代半ばから70年にかけて、公民権運動指導者の故マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)牧師やボクシング元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ(Muhammad Ali)氏など、戦争反対派で米世論に影響力のある著名人を対象に盗聴を行っていたことが25日、情報公開請求で機密解除された文書から明らかになった。

 文書は以前から米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)の国家安全保障公文書館(National Security Archive)の研究者が情報公開を求めていたもの。これに応じて政府の諮問機関が機密解除を命じ、研究者らが同日、公開した。

 モスクの尖塔を意味する「ミナレット(Minaret)」の暗号名がつけられた盗聴プログラムの存在は1970年代に明らかになっていたが、対象となった人物はこれまで秘密扱いのままだった。

 公開された文書によると、NSAが電話盗聴していた人物はキング牧師やアリ氏のほか、米紙ニューヨークタイムズ(New York Times)やワシントン・ポスト(Washington Post)の記者、故フランク・チャーチ(Frank Church)氏ら2人の上院議員などが含まれている。

 機密解除された文書に記された当時のスパイ行為についてNSAは、「違法ではなくとも恥ずべきことだった」と評している。

 ベトナム反戦運動が高まる1967年、当時のリンドン・ジョンソン(Lyndon Johnson)大統領は反戦運動の中に外国の敵対勢力が扇動したものがないか確認するよう米情報機関に命じた。

 これを受け、NSAは他の情報機関と協力して戦争反対派の「監視者リスト」を作成し、こうした人々の国際電話などを盗聴していた。

 盗聴プログラムは故リチャード・ニクソン(Richard Nixon)氏が大統領に就任した1969年後も続いた。その後、ニクソン政権が政治スキャンダル「ウォーターゲート(Watergate)事件」にのみ込まれた1973年、司法長官によって廃止された。

 文書を公開した研究者らは、ベトナム戦争時代に行われたスパイ行為によるプライバシー侵害は現在の比ではなかったと語った。(c)AFP