【9月25日 AFP】中国一の富豪が東部の港湾都市・青島(Qingdao)に建設を始めた大規模な映画撮影施設は、中国の映画産業を大きく飛躍させるだろう。だが一方で、米ハリウッド(Hollywood)に肩を並べるためには、広大な敷地だけでは足りないと、専門家らは指摘している。

 総工費500億元(約8060億円)、総面積376ヘクタールの「東方影都(オリエンタル・ムービー・メトロポリス、Oriental Movie Metropolis)」は、2016年にオープン予定。22日に開かれた盛大な起工式には、ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)やレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ(Catherine Zeta-Jones)といった世界的な大物俳優が一堂に会した。

 20の撮影スタジオを備え、外国映画30本を含む年間100本の映画製作を想定している。定員3000人の大型映画館やショッピングセンター、7つのホテルも併設される。

「東方影都」プロジェクトに出資するのは、中国一の大富豪、王健林(Wang Jianlin)氏だ。会長を務める不動産開発大手・大連万達集団(Wanda Group)は昨年、米映画館チェーンのAMCエンターテインメント(AMC Entertainment)を買収し、世界最大の映画興行会社となった。

 中国政府は国際社会での「ソフトパワー」活用の重要性に気付いている一方で、同国の映画産業は国によって厳しく統制されており、政治的にデリケートとみられるテーマや題材はどんなものでもカットされる。

 また中国映画が国際的に成功することはまれで、国内の映画ファンの間でさえ、中国映画の人気は薄かった。中国政府が公開を許可している外国映画の年間枠は34本だが、これらだけで中国の映画興行収入の半分以上を占めている。

 しかし、2013年上半期にはこの状況が逆転。中国映画全体の興行成績は前年同期比2倍を超え、過去5年で初めて外国映画を抜いた。

 米アカデミー賞(Academy Awards)を主催する映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and SciencesAMPAS)のホーク・コッチ(Hawk Koch)前会長は中国の映画産業について、映画館に足を運ぶファンの膨大な数だけを考えても注目に値すると述べた。「中国での興行成績は世界でナンバーワンになりつつある。注目しないわけにはいかない」

 しかし、より決定的な注目を得るためには、中国映画は「人々の心の琴線に触れるもっと個人的な映画」を作る必要があるとも指摘。「中国はカンフー映画やアクション映画で有名とも言えるが、世界で真剣な注目を集めるためには、もっと内面に迫った映画を作る必要がある」と述べている。

「東方影都」プロジェクトの豪華な発表イベントに出席したオスカー俳優、クリストフ・ヴァルツ(Christoph Waltz)も、「中国版ハリウッド?矛盾した言葉に聞こえるけどね。彼らにチャンスを与えてみようよ」と様子見ムードだった。(c)AFP/Julien GIRAULT