【9月24日 AFP】「汚水」でクリーンエネルギーを作り出す新しい方法を発見した可能性を示す研究論文が16日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 米スタンフォード大学(Stanford University)の研究チームは、生物を使って汚水から従来よりも効率良く電力を得る方法を開発した。

 研究チームはこの技術が、汚水処理施設や海や湖の「デッドゾーン」と呼ばれる酸欠水域で、有機汚染物質を分解するために使われるようになることを期待している。デッドゾーンでは化学肥料の流入によって酸素が枯渇し、海洋生物などが窒息死している。

 現在のところ研究チームは、陽極と陰極の2つの電極で構成される単1電池ほどの小規模な試作品から製作を始めている。

 試作品は、細菌でいっぱいの汚水が入った瓶に沈められている。細菌が有機物質を摂取すると、陰極の周囲に付着した細菌から電子が発せられ、その電子を陽極が次々と捕捉する。

 論文の主著者の1人で、環境工学者のクレイグ・クリドル(Craig Criddle)氏は「われわれはこれを『電子釣り』と呼んでいる」という。「微生物が自身の過剰電子を放出するために『ナノワイヤー』を形成していることが分かる」とクリドル氏は付け加えた。

 空気のない環境に生息し、酸素の代わりに酸化鉱物を「呼吸」してエネルギーを生成する能力を持つ「電流生成菌」と呼ばれる微生物の存在は、科学者の間で以前から知られてきた。

 この10数年間、いくつかの研究グループがこの種の微生物を「バイオ発電機」に変換するためのさまざまな取り組みを行ってきたが、結局このエネルギーを効率的に活用するのは困難なことが分かっていた。

 しかし研究チームによると、今回の新しいモデルは単純だが効率が良く、汚水の潜在的エネルギーの約30%を電力化することが可能だという。市販の太陽電池パネルとほぼ同等の効率だという。

 汚水は太陽光に比べて利用できる潜在的なエネルギー(位置エネルギー)がはるかに小さいことを研究チームは認めているが、新しい方法には「水の浄化」という副産物の利益があると述べている。そのため現在、汚水処理に費やされているエネルギーの一部を補うために利用できる可能性があるという。(c)AFP