【9月19日 AFP】世界経済に多大な影響を与えた2008年の金融危機は、その後に見られた男性の自殺率にも同様に大きな影響を与えていたとする研究論文が、17日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)の電子版に掲載された。

 研究では、54か国における15歳以上の自殺率を、2008年の金融危機以前と以降で比較した。比較の対象としたのは、2000年から2007年までの傾向から推定・算出された2009年の自殺率と実際に確認された2009年の自殺率だ。

 結果、2009年には、それまでの傾向より自殺者が4884人多く出た計算となった。欧州地域の27か国では自殺率が4.2%増加し、カリブ中南米地域の18か国では6.4%の増加が確認された。

 研究によると、自殺率の増加は男性でより顕著に見られた。2009年の男性の自殺率は全体で3.3%増加した。欧州地域では同時期、15~24歳の男性の自殺率が11.7%増加しており、また北米およびカリブ中南米地域では45~64歳の男性の自殺率が最も高く、5.2%の増加が見られた。

 一方、2009年の女性の自殺率は、金融危機以前の推移から推定した自殺率と比べて、全体的に0.5%の減少が見られたという。

■失業率と自殺率の関係性

 研究について論文の筆者は、「2008年の金融危機以降、自殺率は欧州及び南北アメリカの国々で増加した。特に失業率の高い国の男性で顕著だった」と述べた。

 研究によると、欧州での2009年の失業率の上昇率は、2007年比で17~35%だった。また2010年には25~36%と悪化している。

 北米地域では、2008年に失業率の上昇率が23%となり、翌年はその数字が倍増している。カリブ中米地域では2009~10年の上昇率が40~45%だったが、南米地域では同時期の失業率増加は見られなかった。

 研究では、以下の国々・地域が調査の対象となった。

・欧州連合加盟国21か国とロシアを含む非加盟国6か国
・米国、カナダ、およびカリブ中南米地域の16か国
・香港、日本、韓国、シンガポール
・イスラエルやモーリシャスを含むその他5か国

 自殺者に関するデータは、米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)が米国のものを提供。その他の国々については、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)のデータに基づいた。

 これまでに行われた経済危機と自殺率の関係性を調べる研究では、1997年のアジア通貨危機をめぐるものがある。この研究では日本、韓国、香港で、1万人以上が通貨危機後に自殺したとされている。(c)AFP