【9月18日 AFP】ロシアの名門ボリショイ・バレエ団(Bolshoi Ballet)の芸術監督で、今年1月に酸性の液体を顔にかけられる被害に遭い、ドイツで数か月にわたり治療を受けていたセルゲイ・フィーリン(Sergei Filin)氏が17日、事件後初めてモスクワ(Moscow)のボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)へと戻った。

 新シーズンの開始を記念する伝統行事に出席するため同劇場を訪れたフィーリン氏は、集まったバレエ団の団員らと直接挨拶を交わした。

 顔には、モスクワ市内の自宅前で酸性の液体をかけられたことの大きな影響は見受けられず、約10年前に人気ダンサーとしての地位を確立させた美少年風の面影は、現在もはっきりと残っている。

 だが、色の濃い大きなサングラスをかけていたことから、視力はまだ完全に回復しておらず、仕事へ復帰するためにはまだ海外での治療が必要である可能性をうかがわせる。

 フィーリン氏はこの事件で顔に重度のやけどを負い、ほぼ完全な失明状態に陥った。事件をめぐっては、同バレエ団のソリスト、パーベル・ドミトリチェンコ(Pavel Dmitrichenko)容疑者が首謀者としてモスクワで逮捕されるなど、同劇場内の憎悪渦巻く内部闘争が露呈された。

 今シーズンのボリショイ・バレエ団は9月27日、プリマバレリーナのスベトラーナ・ザハロワ(Svetlana Zakharova)さんと、同団初の米国人ダンサー、デービッド・ホールバーグ(David Hallberg)さんが主演する「白鳥の湖(Swan Lake)」で開幕。ホールバーグさんにとっては、けがからの復帰公演になる。(c)AFP