【9月17日 AFP】大西洋に沈んだ豪華客船タイタニック(Titanic)号に乗船していた楽団のバンドマスターが使っていたバイオリンが、このほど英国・北アイルランドのベルファスト(Belfast)にある同沈没事故の博物館で展示されることになった。関係者が16日に明かした。

 このバイオリンは、当時「沈まない船」と呼ばれたタイタニック号に楽団のリーダーとして乗船していたウォレス・ハートレー(Wallace Hartley)さんのもので、当時34歳だった婚約者からのメッセージがバイオリンに刻まれている。1912年4月15日、タイタニック号が北大西洋上で流氷に衝突した際、救命ボートに群がる乗客たちを落ち着かせるため、ハートレーさんをはじめとする8人の楽団は「主よ、御許に近づかん(Nearer, My God, To Thee)」を演奏し、そのまま演奏を続けながら死ぬことを選んだ。

 もともとこのバイオリンは、1910年にハートレーさんの婚約者のマリア・ロビンソン(Maria Robinson)さんが記念の品として贈ったもので、バイオリンには、「ウォレスへ、婚約を記念して マリアより」と刻まれた銀製の飾り板が取り付けられている。

 ハートレーさんの遺体はタイタニック号の沈没から10日後に収容され、遺体に結びつけられていた皮製のバッグの中にバイオリンが入っていたとみられている。

 その後、バイオリンを引き取った婚約者のマリアさんは生涯独身を貫き、1939年に死去。マリアさんの家族が地元の救世軍(Salvation Army)の楽団に寄付した後、バイオリンはある音楽教師の手に渡ったという。そして最終的に匿名の人物の手に委ねられ、2006年に英国の民家で発見された。

 このバイオリンは、沈没事故に関する品々を集めた博物館「タイタニック・ベルファスト(Titanic Belfast)」にて18日から来月13日まで展示された後、英南西部ウィルトシャー(Wiltshire)州で来月19日、オークションにかけられる予定となっている。(c)AFP/Danny KEMP