【9月13日 AFP】巨大地震のメカニズムを探るため、南海トラフ(Nankai Trough)付近で海底掘削調査を行う予定の海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and TechnologyJAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう(Chikyu)」が13日、静岡県の清水港を出発し、和歌山県紀伊半島沖の調査地点に向かった。

 総額500億円以上をかけて2005年に建造された「ちきゅう」(5万6752総トン)は、2007年から南海トラフの調査を実施している。掘削やぐらの高さは海面から121メートルで、従来の掘削船と比べて3倍深い海底下7000メートルまで掘り抜ける。

 今回は、約4か月の調査で海底下3600メートルまで掘削し、震源域の地層を採取する予定。また来年に予定している調査では、実際に地震が起こるとされる海底下5200メートルまで到達する計画だ。

 JAMSTECの小俣珠乃(Tamano Omata)研究員によれば、巨大なエネルギーが解放されることで断層線沿いにずれが生じ大きな津波を引き起こす震源域に、直接掘削調査が入る例はこれまでにないという。

 調査チームは地震計、歪計、温度計などを備えた地震・津波観測システム(Dense Oceanfloor Network System for Earthquakes and TsunamisDONET)を、紀伊半島沖の海底に設置しようとしている。地上の監視モニターに直結させ、地震発生直前の地殻変動の監視を可能にしたい考えだ。

 JAMSTEC地球深部探査センター(Center for Deep Earth Exploration)の倉本 真一(Shinichi Kuramoto)企画調整室次長によれば、過去5年間に南海トラフ付近では、2つの地殻が互いに静かに滑って起こる弱い地震が頻繁に起きていることが、最近の研究で示されている。こうした地震が巨大地震の予兆である可能性もあるという。

 西日本が載るユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる南海トラフ付近は、近い将来、巨大地震の震源となる可能性があると専門家らが警告している。日本政府は昨年、この地域で巨大地震が起きた場合の最大死者数は、2011年3月11日の東日本大震災を大きく上回る32万人との被害想定を発表している。(c)AFP/Harumi OZAWA