【9月12日 AFP】中国・遼寧(Liaoning)省瀋陽(Shenyang)で開催されている第12回中華人民共和国全国運動会(12th National Games of the People's Republic of China)では、けんか、噛みつき、規則違反などがはびこり、メダルを獲得する原動力は私欲に包まれているとの非難が噴出した。

 国内最大のスポーツの祭典で、4年に1度行われることから「中国の五輪」と称される同大会は12日に閉幕を迎える。

 中国各地に住むアスリートの他、軍や救急隊員など、国が組織するチームからも代表選手が参加し、愛国精神や友好を象徴する大会として開催されている。

 しかし、スポーツ関係者にとってこの大会の持つ意味は大きい。ここで成功を収めれば、大きな宣伝効果となり、北京(Beijing)の中央政府から助成金を引き出すことができる。その一方で、結果が出せなければ、すべてを失う可能性もある。

■歪んだスポーツ界のシステムが生み出した「茶番」

 2週間にわたって行われた今大会では「誰もが楽しめる運動」というもっともらしいスローガンが掲げられているが、過剰なプレッシャーにさらされた一部の出場選手によって、目を疑う光景も多く見られた。

 競泳のオープンウオーター女子10キロメートルでは、2人の選手がけんかを始め、どちらの選手もゴールすることができなかった。

 五輪での競技存続が決まったばかりのレスリングでは、重量級の戦いで河南(Henan)省の選手が対戦相手の内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)の選手に噛みつかれるという事態が発生した。

 しかし最も衝撃的だったのは、女子7人制ラグビーで山東(Shandong)省との決勝戦に臨んでいた北京チームが審判への抗議として試合途中からプレーを拒否した場面だろう。

 北京チームは円陣を組んで立ちすくみ、相手チームが繰り返し得点を重ねるのを黙ってやり過ごした。結果は71-0で山東省が勝利を収めている。

 2016年のリオデジャネイロ五輪から正式競技に導入されるとあって、7人制ラグビーは中国でも大きな投資対象となっている。北京選手団の関係者が大会開幕からラグビーチームに高い目標を与えていたという証言もある。

 この一件について華南師範大学(South China Normal University)のスポーツ社会学者は、「審判の判定や負傷によって試合を放棄したように見なされているが、メダル獲得に対する強迫観念を引き起こしているスポーツ界のシステムが生みだした茶番劇である」との見解を示した。

 また、大会開幕前から他よりも優位に立とうとしていた地域もある。

 女子テニス、世界ランク5位の李娜(Na Li、ナ・リー)を擁する湖北(Hubei)省は、全米オープン(The US Open Tennis Championships 2013)と開催時期が重なるため、李は出場しないということが明白であるにもかかわらず、同選手が代表として国内大会に参加すると明言していた。

■成功を掴むために必死になる選手

 中華帝国時代を起源とする全国運動会は共産党政権下の1959年に第1回大会が開催され、最初の2大会では人民解放軍が(People's Liberation Army)がメダル数でトップを独占した。

 しかしその後、中国がスポーツ大国として五輪、アジア大会、競泳の国際大会で頭角を現すようになると、国内大会の存在価値が徐々に薄れてきた。

 とはいえ、国際舞台に立つことができないアスリートにとってはメダルや名声を得て引退後の生活を保障する唯一のチャンスでもあり、必死の思いで成功を求める選手もいる。

 AFPの取材に応じた大会関係者は、アスリートや関係者に還元される報奨金についてのコメントは拒否したものの、大会は成功に終わったと述べた。

 さらに女子7人制ラグビーについて同関係者はこう語った。

「(北京)チームは満足していないだろうが、どこが優勝でどこが準優勝だろうと、順位は重要なことではない」

(c)AFP/Neil CONNOR