【9月11日 AFP】中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory SyndromeMERS)のサルを使った実験で、抗ウイルス薬2種類の併用によりウイルスの拡散を抑制できたとする研究論文が、8日の英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に掲載された。

 米国立衛生研究所(National Institutes of HealthNIH)のハインツ・フェルドマン(Heinz Feldmann)氏率いる研究チームによると、アカゲザルを使った実験でインターフェロン・アルファ2b(interferon-alpha 2b)とリバビリン(ribavirin)を使ったところ、MERSコロナウイルスの拡散が抑制されたという。この2種類の薬は、C型肝炎に対する治療でしばしば併用される。

 実験では、炎症の抑制と肺炎リスクの減少がみられたというが、ただ現時点においては、MERSに対する治療法は確立されておらず、またワクチンも存在していないことから、インターフェロンとリバビリンの併用は「早期介入療の1つの選択肢と見なすべき」と研究チームは論文に記している。

 実験は、MERSウイルスに感染させたアカゲザル6匹を対象に行われた。このうちの3匹には、感染から8時間後にインターフェロンとリバビリンを使い、その後3日間にわたって投薬を続けた。残る3匹には比較のために投薬は行われなかった。投薬終了後、研究チームはアカゲザルを殺してその死骸を解剖し、ウイルスのレベルと組織への影響を調べた。研究チームによると、アカゲザルを対象にした実験は、培養皿の細胞で2種類の薬がMERSウイルスを抑制することを確認した後に行ったという。

 しかし研究チームは、この研究には限界があると述べる。アカゲザルは、MERSの前臨床試験で対象となるとされている唯一の動物だが、発症後に見られる症状は軽度または中度にとどまる傾向がある。そのため、インターフェロンとリバビリンの併用が、重症のMERS患者に対しても同様の効果が得られるのかは分からないとしている。

 ただ人間に対しては、より遅いタイミングでの投薬が可能かもしれない。研究チームは、「人間での長期の疾病経過は、治療可能な時間域がより長いことを示唆している可能性がある」と論文で述べている。(c)AFP