【9月7日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)の総統アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の元護衛で、第2次世界大戦末期のヒトラー最後の日々を目撃した最後の生存者、ローフス・ミシュ(Rochus Misch)氏が5日、ベルリンで心臓発作のため死亡した。96歳だった。ミシュ氏が書いた本の著作権代理人ミヒャエル・シュティーレ(Michael Stehle)氏が6日明らかにした。

 ヤエル・カッツ・ベン・シャローム(Yael Katz Ben Shalom)監督のドキュメンタリー映画『The Last Witness』(2005)の中でヒトラーについて「いいボスだった」と語ったミシュ氏は、ドイツ降伏の数日前に自殺したヒトラーと地下壕で行動を共にした1人。

 2005年にAFPが行ったインタビューでミシュ氏は、ヒトラーと、自殺直前に結婚した妻のエバ・ブラウン(Eva Braun)の死について、「ヒトラーはテーブルに座ってうつ伏せに倒れ、エバは彼の隣に横たわっていた。私はそれをこの目で見た」と証言している。「彼は廊下でさようならと言って、部屋に入って行った。邪魔をしないでほしい、と言ったのを覚えている」

■ソ連軍の捕虜になり抑留

 ヒトラーは死ぬ覚悟のエバ・ブラウンを毒殺し、自分は頭を撃った。歴史家は、遺体は燃料をかけられて焼かれた、と信じている。 それは驚きではなかった、とミシュ氏は付け加えた。「司令官たちは全員がヒトラーを避難させたいと願ったが、彼はだめだ、ベルリン(Berlin)に残ると言った」

 その2日後、ソ連軍がベルリンの総統官邸を襲った1945年5月2日、当時27歳だったミシュ氏は電話交換手として働いていた地下壕から最後に逃れた人たちの1人だった。ミシュ氏はソ連軍の捕虜となり、カザフスタンとシベリア(Siberia)で1953年まで抑留された。

 現在のポーランドのシュレジエン(Silesia)地方に生まれたミシュ氏はペンキ職人になり、その後ナチス親衛隊(SS)に加わって1940年からヒトラーの護衛をした。抑留から帰国した後は画家として働いた。2008年に出版した著作「Der Letzte Zeuge(最後の目撃者)」がベストセラーになり注目を集めた。シュティーレ氏によるとこの本の英訳が来月出版予定だという。(c)AFP