【9月3日 AFP】台湾で過去にも議論を呼んできた姦通罪に関する論争が再燃している。56歳の未亡人が既婚男性と不倫をしたとして、計算上298年の禁錮刑を受ける可能性が浮上していたことが分かったためだ。

 被告の未亡人は夫の死後、5年前から隣人男性と不倫の関係にあったことで起訴され、禁錮2年または罰金73万台湾ドル(約240万円)の判決が下された。

 しかし裁判所の関係者によると、被告と不倫相手の供述から複数のモーテルでの密会の回数が894回に上ったとみられることが確認され、裁判官らがその供述書を採用したことから、被告は298年の禁錮刑を科される可能性があったという。

 台湾の法律では、1回の違法行為につき最長4か月の禁錮刑が定められている。しかし彰化(Changhua)県の地方法院は減刑を決定した。地裁はAFPの取材に対し、「重罪にあたる違法行為ではないことから、裁判官らは適切と考えられる懲罰にすることにした」と説明している。

 一方、被告の不倫相手だった50歳の男性は法的刑罰を免れた。当初は2人を訴えた男性の妻が、夫に対する告訴のみを取り下げたためだ。

■姦通罪に関する論争再燃

 今回の裁判をきっかけに、台湾では再び姦通罪の廃止を訴える声が高まっている。非営利組織、「Modern Women's Foundation(現代女性基金)」の幹部は、「姦通罪がいまだに刑事犯罪とされているのは、台湾のほかいくつかの国だけ」と指摘する。

「彰化県の裁判では相手の男性が罪を逃れているのに、なぜ被告だけが罰せられるのでしょう。公正を欠いています。誰を愛し、誰と性的関係を持つかを決める権利は女性にも認められるべきですから、姦通罪は廃止されるべきです」と訴えている。

 台湾では世論が姦通罪の維持に賛成であることから、当局は廃止に消極的だ。今年5月に法務部(法務省)が行った最新の世論調査では、回答者の77.3%が姦通罪の廃止に「反対」と答えていた。(c)AFP