■ファッションへのこだわりが食や雑貨に向けられる時代

 近年リニューアルした雑誌の中でも、特に男性ファッション誌『HUgE』(ヒュージ 以下『ヒュージ』に統一)の変貌ぶりは目覚ましいものがある。2003年に講談社から創刊され、2012年4月号から大きくリニューアルした同誌。中でも8月号は特集が「食べる つながる」。表紙も食材のみの写真。「『ヒュージ』はファッション誌であるのを辞めたのか?」とすら思えるその変貌ぶりに筆者を含め驚いた人もいるはずだ。『ヒュージ』のディレクターである右近亨さんにこの大きな変貌の理由を伺いたく、編集部を訪れた。彼いわく、リニューアルは、人々のファッションとライフスタイルの融合を彼自身が肌で感じたことが、大きく起因していたという。

 「海外でのファッション・シューティングのために現地のストリートでモデルを探すとき、昔はクラブに探しに行っていました。しかし、一昨年サンフランシスコに行き、サードウェーブ系のコーヒーショップを訪れると、店員もお客もとにかくかっこよく、僕たちはそこで色んなモデルをハントしていたのです。オーナーは、ファッション・デザイナーやセレクトショップの経営をしていてもおかしくないようなファッション的感覚を持っています。自分達が毎日飲むコーヒーに関しても“こういうスタイルで、こういう時はこういう椅子で、こういう空間を演出するのがかっこいい”という考え方。彼らに友達を紹介してほしいと頼むと、近所のチョコレート工場のおじさんがかっこいいよと、やはり同じような空気感でかっこいい人を教えてくれる。そうしたつながりを見たとき、ファッションとライフスタイルがほぼ同じなのだなと思ったのです。誰から教えられたり、押し付けられたものでもなく、自分が選んだもので、自分だけの良い空間、良い生活があれば良いという考えが芽生えている。

 そうした価値観の変化は大きな流れだと捉えて、その延長線上に『ヒュージ』のリニューアルに対する考え方があります。先日、kolorのデザイナー阿部潤一さんとお話したとき、印象的な言葉をいただいたんです。“僕は『ヒュージ』が好きですが、『ヒュージ』を見て、そこに載っているコートを買おうとは思わない。でも、ここに出ている西海岸のオーガニック・ラーメンは食べたいと思うし、雑貨は買いたいと思う”と。その言葉を聞いて、今はファッションにこだわりを持つ人たちが、同じ軸のまま食や雑貨など他のものを見ているという実感を得られたんですね」