【9月2日 AFP】結核(TB)を引き起こす病原菌に関する過去最大規模の遺伝子調査により、結核菌が遅くとも7万年前に初期人類の道筋をたどってアフリカ大陸の外へと拡大したことが分かったとの研究論文が1日、米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に発表された。

 結核は、最も致死率が高いとされている病気の一つ。治療を施さないと、感染患者の約半数が死に至る。抗生物質の開発が進んだ現在も、発展途上国を中心に毎年100万~200万人の結核患者が死亡している。

 スイス熱帯公衆衛生研究所(Swiss Tropical and Public Health Institute)のセバスチャン・ガニュー(Sebastien Gagneux)氏率いる研究チームは、世界中から集められた259個の結核菌株のDNAを比較した。研究チームは、結核菌の進化の速度を表すために遺伝子変異を一種の分子時計として使い、結核菌の「系統樹」を作成した。

 DNAの比較により、結核菌の起源は7万年以上前のアフリカであることが明らかになった。これは、人類が生まれ故郷のアフリカから移動した年代と一致する。

 研究チームは実際に、現生人類ホモ・サピエンスとヒト結核菌の系統樹が驚くほど似ていることを発見した。これは、初期人類の居住地と結核菌の生息地が非常に接近していたことを示唆しているという。

 ガニュー氏は「人類の人口が増大した時、結核菌の多様性が著しく増加したとわれわれは考えている」と話す。人類がより大きな集団で生活を始め、結核菌が人から人に効率的に感染できるようになった時期に、結核も拡大し始めたと論文の著者らは推測している。

 今回の分析結果は、他の非常に多くの細菌やウイルスで見られる家畜から人への感染が、結核でも起きた可能性が低いことを示している。ただ、これは「単に結核菌が出現した時期が、人類が家畜の飼育を始めるよりはるか昔だからにすぎない」とガニュー氏は述べている。(c)AFP