【9月1日 AFP】英イングランド(England )南西部に位置するコーンウォール半島(Cornish Peninsula)の印象的な海岸線には、鉱業で栄えた過去の名残の煙突などの廃虚が点在する。海にはもう1つの遺産──数千トン規模のスズ──が掘り出されるのを待って眠っている。

 鉱業会社マリン・ミネラルズ(Marine Minerals)のマイク・プラウドフット(Mike Proudfoot)社長は、美しいコーンウォール北岸を見渡しながら紺ぺきのケルト海(Celtic Sea)の方を指して、「あそこには2万2000トンのスズが埋蔵されている」と話した。同社は2015年にスズの採掘を開始するライセンスを申請した。10年がかりのプロジェクトだ。

 だがコーンウォールでサーフィンを楽しむ人たちの間では、大規模なスズ採掘で大きな波が来なくなるかもしれないとして、採掘計画の評判は良くない。

 コーンウォールの経済を支える観光業界も、採掘で繊細な海洋環境が破壊され、手つかずの海辺が汚染されるのではないかという懸念を示している。公式の統計によると、サーフィンはコーンウォール経済に年間約6400万ポンド(約97億円)と1600人の雇用をもたらしている。自然や景観の保全活動を行う英民間団体ナショナル・トラスト(National Trust)のトニー・フラックス(Tony Flux)氏はAFPに「コーンウォール北岸は観光業にとって非常に重要な地域だ。観光業に損害を与えるような事柄は真剣に検討する必要がある」と述べた。

 埋蔵する膨大な量のスズは、鉱業が最盛期にあった18~19世紀に河川へ投棄された鉱業廃棄物の残骸だ。長い年月をかけて廃棄物は水流で海へ運ばれ、削られて小さな粒子となった。

 スズは携帯電話やタブレット端末などさまざまな種類の電子製品の製造に使用される。現在のスズの取引価格は1トン当たり2万1000ドル(約206万円)。2011年4月に付けた過去最高値の同3万3600ドル(約330万円)を下回るものの、依然として高い水準にある。

 プラウドフット社長は1970年代からコーンウォールに住む南アフリカ人。スズで利益を得ようと80年代に事業を始めたが、スズ価格の暴落で野望はくじかれた。今回は計画への反対に直面し、新たな採掘方法の提示で反対する人々を納得させようと試みる。新たな方法とは、機械で堆積物を海から吸い上げ、船上でろ過するというもの。加工のため工場へ運ばれるのは全体の5%ほどで、残りはすぐに海へ戻される。だがサーファーの一部は、自分たちの懸念を和らげようとする同社の試みに疑問を投げ掛ける。

 他の重金属と同様に、スズは化学物質による環境汚染の危険がある。環境保護団体は、マリン・ミネラルズ社に水質保護に対する保証を要求している。一方、同社は、初期段階の調査で検出されたヒ素は極めて低い水準だと主張。プラウドフット社長は、環境への影響に関する調査に50万ポンド(約7600万円)を投じていると強調した。(c)AFP/Jessica BERTHEREAU