【8月28日 AFP】7000年前の石器時代、現在の欧州地域で暮らしていた狩猟採集民は定住の農耕民との間で取引を行い、イノシシの捕獲不足を補うために家畜のブタを入手していた可能性があるとの研究論文が27日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)で発表された。

 独キール大学(University of Kiel)などの研究チームが発表した論文によると、遊動生活を送っていた北欧地域の狩猟採集民エルテベレ(Ertebolle)と、「肥沃な三日月地帯(Fertile Crescent)」と称される現在のトルコ、シリア、イラク周辺から移動し定住した農耕民との間で、生きた動物の取引が行われていたことを示す世界初の証拠を今回の研究は示しているという。

 北欧では、紀元前約5500年から4200年まで、狩猟採集民と農耕民が共存していた。エルテベレ狩猟採集民は、バルト海沿岸(Baltic Coast)西部でアザラシやイノシシを捕って暮らしていた。一方の農耕民は、欧州中部を流れるエルベ川(Elbe River)の南側で作物や家畜を育てていた。

 これまでにも、農耕民が使っていたものと似たおのや陶器が狩猟採集民の集落跡で出土していることから、この2つの異なるグループは散発的な接触を持っていたと考えられている。だが、交流の性質や範囲については、いまだに謎とされている。

 研究チームは今回の新しい研究で、エルテベレ狩猟採集民の集落跡で発掘されたブタの死骸から採取したDNAを解析した。その結果、農耕民の家畜のブタと同様に、このブタも母系に中東由来の祖先を持つことがわかった。これまで狩猟採集民がイヌ以外の家畜を入手したことを示す証拠は見つかっていなかった。

 2つのグループは互いに取引をしていた可能性が高い。ただ、考えられる別の解釈として、「家畜泥棒」であった可能性も排除できないと研究チームは述べる。

 エルテベレ狩猟採集民は家畜ブタを数匹飼育し始めた後も数百年の間、野生の獲物の狩猟を続けたとみられており、家畜のブタとの遭遇が狩猟採集民の生活様式を大きく変化させることはなかった。

 今回の研究ではまた、従来考えられていたより約500年前から家畜のブタがこの地域に存在していたことが分かっている。(c)AFP