【8月28日 AFP】「キャス・キッドソン(Cath Kidston)」のアイテムは一目でそれと分かる。華やかな色、明るいプリント、そして英国的なスタイルへのノスタルジアで溢れる「キャス・キッドソン」は世界的に最も成功している英国ブランドの一つだろう。

 ヴィンテージがテーマのバッグや洋服、キッチン用品を展開し、特にアジア圏に根強いファンを持つ同ブランドは、今年初めて1億ポンド(約152億円)の売り上げを突破した。英国貴族とのつながりを持つインテリアデザイナーのキッドソンが、西ロンドンに「神聖なガラクタ店(glorified junk shop)」を開店して今年でちょうど20周年。1億ポンド達成はブランドとしても節目の出来事になった。

 今や世界に118の店舗を構える「キャス・キッドソン」だが、その半分以上は英国外にある。特に30店舗を展開する日本での人気は非常に高く、韓国にも12店舗を構えている。今後は中国での展開に力を入れ、それを足掛かりにシンガポールやインドネシアにも進出する予定だ。

 ブランドの最高責任者、Kenny Wilson氏はAFPの取材に対し、「アジア圏の人たちは、ブランドの英国らしさが好きなのです。彼らは少し風変りだけれど、典型的な英国っぽさを感じさせるデザインや、日常的に使える点を気に入っているようです。そして世界中の顧客と同様、彼らは単に私達の独特なプリントデザインが大好きなのです」とコメントした。

■明るく上品に

 キッドソンはヴィンテージスタイルのパイオニアといっていいだろう。最初の店舗では中古品に手を加え、英国の伝統的なデザインに仕立てた品々を販売していた。

 初の作品は、ローズプリントを施したアイロン台のカバーだった。今やこのローズプリントはティーカップやタオルなど1000点以上の商品に使われ、ブランドの代表的な柄になっている。手書きの花々、ドット、イチゴ、カウボーイ、海辺の風景、ロンドンバス、そしてバッキンガム宮殿の守衛などのプリントもある。

 キッドソンは20周年を記念した本に「私たちの代表的なルックは、カラフルで、明るく、気の利いたものでありながら、決してこだわりすぎず、かわいらしすぎず、上品すぎないものです」と、綴っている。ブランドが描くイギリスのイメージ、田舎のキッチンや、バラが咲き誇る庭は、ほとんどの英国人の生活からは程遠い存在であるが、それが人々を魅了する要因の一つだ。「キャス・キッドソン」は最初に「グランピング(glamping=glamorous camping、ホテル並みの快適さを取り入れたキャンプ)」に目をつけたブランドの一つでもある。スタイルに敏感な人々のために花柄のテント、ゴム長靴、傘などのアイテムを売り出した。

 「このヴィンテージ感が大好きです、花柄の生地はとても家庭的だし、品質も良いですよ」オックスフォード在住の2人の子どもの母親、Rose Baylisさんは語った。東京、新宿にあるアウトレット店では、23歳の会社員、ニシダカオリさんが猛暑を乗り切るべく、日傘とランチボックスを選んでいた。ニシダさんはAFPに「可愛らしいデザインが好きです。過激でもアヴァンギャルドでもなく、派手でもないのにお洒落ですね」と語った。

 批評家はブランドが、花柄のクッキー瓶に16ポンド(約2500円)を払う余裕がある中流家庭の人々に、1950年代を彷彿とさせるバラ色の家庭生活を普及させようとしていると批判している。

 しかしブランドは数々の大手小売業が破綻した経済状況の中でも成長を続けている。昨年、英国国内での取引は21%増加し、アジア圏での売り上げは53%上昇した。

■キーマーケットへの注目

 キッドソンは負債の蓄積やブランドの価値を薄めることを恐れ、会社をゆっくりと大きくしてきた。家具大手「イケア(IKEA)」のために花柄のプリントをデザインした際も、彼女の名前を出すことを許可しなかった。

 2003年には会社を成長させるため、株式の過半数を売却。54歳になった現在でも、クリエーティブ・ディレクターとしてフルタイムで働いている。当初は手を広げすぎ、ニューヨークとロサンゼルスに2店舗を開いたが閉店した。現在は要となるイギリスとアジアの市場に絞っている。

 キッドソンの主力製品は昔も今もバッグだ。ガーデンローズ(garden rose)柄のバックパックは複数のセレブが持っていたことで注目を浴び、韓国ではもっとも人気のあるファッションアイテムの一つとなっている。

 調査会社ユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)のアナリスト、Antonia Branston氏によると「手頃な値段のラグジュアリー製品は、高級品が好きではあっても、毎回は買えないという顧客層の予算に合っている」のだという。

 「キャス・キッドソン」の成功は、アジアや、英国の露店にあふれる安いコピー商品からも見て取れる。ロンドンのカムデンマーケット(Camden Market)では、花柄のプリントや水玉のバッグが売られており、見覚えのある赤字の斜体でラベルが書いてある。ただし、ブランド名はCath Kidstonではなく、Colour Lifeだ。(c)AFP/Alice RITCHIE