【8月22日 AFP】スペインで教会のイエス・キリストの肖像画をまるでサルのように「修復」して世界中から失笑を買った82歳の女性が、問題の絵の著作権収入の約半分を手にすることになった。

 セシリア・ヒメネス(Cecilia Gimenez)さん(82)は1年前、スペイン北東部ボルハ(Borja)の教会の柱に100年ほど前に描かれたキリストのフレスコ画「Ecce Homo(この人を見よ)」の修復を手掛けた。だがその結果、キリストは青白い顔に漫画のような目と口をしたサルのような姿に変わってしまった。口はゆがんだ染みのようになっている。

 あまりにひどい仕上がりに修復後のキリスト画像はすぐさまインターネットで世界中に広まり、嘲笑や非難の対象となった。

 問題のフレスコ画があるサントゥアリオ・デ・ミセリコルディア(Santuario de Misericordia)の教会を運営する慈善財団によると、この1年で芸術的災難に見舞われた作品とともに写真に収まろうという観光客が5万7000人も同教会を訪れた。

 ボルハ市が保有する同財団は、訪問者1人につき1ユーロ(約130円)の入場料の徴収を始めた。入場料収入はフレスコ画の保存や慈善活動の費用に充てる。

■著作権収入の49%がヒメネスさんに

 だが、より大規模な収入が期待できそうなのが、ワインボトルのラベルからマグカップ、Tシャツまで、ありとあらゆる商品を対象にした修復後のキリスト画の著作権収入だ。

 ボルハ市で文化分野を担当するフアン・マリア・オヘダ(Juan Maria Ojeda)副市長はAFPに対し、修復後のフレスコ画の著作権収入の49%をヒメネスさんが受け取り、残りは教会の運営財団のものとする契約が21日に結ばれたことを明らかにした。

 年配の芸術家ヒメネスさんはもう笑いものではない。自身の作品を集めてボルハで開催した個展は好評を博した。だが、ヒメネスさんの弁護士、アントニオ・バルカレレス(Antonio Val-Carreres)氏は「収益は全て財団とセシリアさんが慈善目的で使用する」と述べ、ヒメネスさんは金持ちになりたがっているわけではないと語った。「この騒動を利用して金儲けしようと考えている人は誰もいない。ぜひこのことは明確にしておきたい」

 バルカレレス氏は、すでに国際的な大企業数社が修復された絵の使用に関心を示していると話したが、まだ正式な契約を結んでいないという理由でその社名は明かさなかった。

■オリジナルの画家の子孫は不満

 しかし元のフレスコ画を描いたスペイン人画家エリアス・ガルシア・マルティネス(Elias Garcia Martinez)の子孫は、キリストの絵が台無しにされたまま復元されないことに不満を持っている。

 この点が最も大きな意見の相違点となっていることを、最近マルティネスの子孫の1人と話をしたというオヘダ副市長も認める。「子孫の何人かは復元を求めているが、おそらく今となっては不可能だろう。他に修復後の絵を教会からどこか別の場所に移してほしいと言っている子孫もいる」

 ボルハ市とヒメネスさんの弁護士は共に、元のフレスコ画の作者マルティネスの子孫たちさえ同意するならば、著作権収入に関する契約を子孫たちにも拡大する用意があると語っている。(c)AFP/David WILLIAMS