【8月22日 AFP】英中部レスター(Leicester)の駐車場から見つかった15世紀のイングランド王、リチャード3世(Richard III)の遺骨を再埋葬する場所をめぐり、レスター側とリチャード3世の子孫が争いを展開している。この件について裁判所は16日、最終的な埋葬場所について一般市民の声を聞くべきだとの判断を示した。

 英劇作家ウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)の作品によって悪者として扱われるリチャード3世の遺骨は昨年、レスター(Leicester)の市庁舎の駐車場から発掘された。

 遺骨を発掘したレスター大学(University of Leicester)の考古学チームは遺骨の所有を主張。遺骨をレスター大聖堂(Leicester Cathedral)に再埋葬する計画を立て、英政府もこれを承認している。

 だがリチャード3世の子孫らは、遺骨はリチャード3世の権力基盤で、名前の由来ともなった北部のヨーク(York)に葬るべきだと主張。リチャード3世の遺骨をヨーク大聖堂(York Minster)に再埋葬することを求める陳情書に2万7400人以上が署名する一方、レスターに埋葬すべきとの陳情書も8000人を超える署名を集めた。

 この件に関して高等法院のチャールズ・ハドンケーブ(Charles Haddon-Cave)判事は16日、「イングランド王の遺骨が500年を経て見つかるという考古学的発見は前例がない」として、独立委員会を設置し、リチャード3世の遺骨の最も適切な埋葬の方法について一般市民の意見を広く問うべきだとの判断を示した。

 またハドンケーブ判事は、リチャード3世の子孫らに、ヨークへの再埋葬を計画したレスター大学とこれを承認した司法相に対して訴訟を起こす許可を与えた。

 シェークスピアの戯曲では背中の曲がった残忍な悪役として描かれたリチャード3世は、1485年のボズワースの戦い(Battle of Bosworth)で死亡し、葬儀もないままレスター近郊に埋葬されたとされる。リチャード3世の死によってランカスター(Lancaster)家とヨーク(York)家の間で争われた薔薇戦争(War of the Roses)は終結した。

 遺骨埋葬をめぐる争いについてハドンケーブ判事は、見苦しい争いは止め、法廷で「薔薇戦争の第2部」が展開することを避けるよう双方に求めた。(c)AFP