【8月16日 AFP】エジプトの首都カイロ(Cairo)で14日、ムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領の出身母体であるイスラム主義組織「ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)」の座り込みデモを警官隊が強制排除し、600人近くの死者が出ている問題で、軍主導の暫定政府に対する世界各国からの非難が高まっている。

 同国保健省によると、これまでに推定43人の警官を含む少なくとも578人が死亡。同国でここ数十年間に起きた中では最悪の流血の惨事となっている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は15日、米政府は軍の行動を「強く非難する」と述べ、エジプトは「より危険な方向へ」向かったとして、エジプトとの合同軍事演習の中止を発表した。エジプト初の民主的選挙で大統領に選出されたモルシ氏が解任された当初、米国は反対の立場を表明することはなく、エジプトの政変を「クーデター」と呼ぶことも避けてきている。これを「クーデター」と認定すれば、米国は同国への援助停止を余儀なくされる。

 フランスや英国、ドイツ、イタリア、スペインの各政府は、エジプト大使を呼び出し、強い懸念を伝えた。ナビ・ピレー(Navi Pillay)国連人権高等弁務官は、死者数の多さは「デモ参加者に対する過度で極端な武力行使」を示していると述べた。

 モルシ前大統領を支持するトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相は、エジプトでの「大虐殺」に関する国連安全保障理事会(UN Security Council)の緊急会合を呼びかけた。

 中国はこれまで通り「静観」の立場を取り、全当事者に対し「最大限の自制」を求めた。一方、中国と同じく安保理常任理事国であるロシアは、旅行者らに対しエジプトへの渡航自粛を勧告するのみにとどめている。(c)AFP