【8月16日 AFP】台風の接近で荒れていた香港(Hong Kong)のビクトリア湾(Victoria Harbour)で14日、溺れていた男性を、通りかかったランニング中の女性が海に飛び込んで救助した。地元メディアが15日に伝えた。この女性は「スーパーアイアンウーマン」と称賛されているという。

 ルイーズ・チョウ(Louise Chow)さんは14日、ビクトリア湾のウォーターフロントをジョギングしていて人だかりに気付いた。見ると、強力な台風11号(アジア名:ウトア、Utor)の接近で秒速28メートルを超す強風が吹き荒れる湾内で男性が溺れており、人々はその救出の様子を見守っていた。「どうしてだか分からないけれど、とっさに靴と靴下を脱いで飛び込んだんです」と、チョウさんは蘋果日報(Apple Daily)のウェブサイトに掲載された動画で当時を振り返っている。

 チョウさんの職業はダイビングのコーチ。救命具と男性をしっかりつかむと、岸まで引いて戻った。地元メディアには、周囲の人々が手伝って男性を岸に引き上げるドラマのような写真が掲載されている。

 溺れていた男性(24)は報道によれば自殺を試みたとされ、映像の中では泣きじゃくっている。チョウさんは救急車が来るまで男性に付き添っていたが、男性は「僕は死ぬんだ、僕は死ぬんだ。もう何もない。香港にも1人きりで来た。何も持ってないんだ」と言い続けていたという。

 男性は香港に近い広東(Guangdong)省深セン(Shenzhen)の出身で、病院に搬送され容体は安定していると報じられている。警察によると精神疾患の病歴があるという。

 一方、香港紙スタンダード(The Standard)によれば、チョウさんはカキの貝殻で切り傷を負い、桟橋で治療を受けたが、その後、3キロのランニングを再開した。チョウさんは以前にも香港で新米ダイバーの救出に一役買ったことがあるといい、目撃者はチョウさんのことを「スーパーアイアンウーマン」と呼んでたたえたという。

 香港ではこの日、台風の接近で学校が休校となり、公共機関もサービス提供を中止していた。香港沖では同日、全長190メートルの貨物船が台風のため沈没している。(c)AFP