【8月13日 AFP】北朝鮮が開発・製造したとされるスマートフォン(多機能携帯電話)「アリラン(Arirang)」が公開された──ただ業界筋によると、実際の製品は中国製である可能性が高いという。アリランは米グーグル(Google)の基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」をベースに開発された。

 朝鮮民謡「アリラン」の名前を冠したこの携帯電話の存在は、前週末に実施された北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記の工場視察で明るみに出た。

 朝鮮中央通信(Korean Central News AgencyKCNA)によれば、金第1書記は視察中に「アリラン携帯電話の性能や品質、包装」についての説明を受けたという。 「アリラン」の開発について一部の専門家は、当局が監視できる公式の携帯電話を市民に使わせることが狙いと指摘した。

■「中国製」の可能性、専門家ら指摘

 KCNAによれば、金第1書記は「ユーザーに最も快適でセキュリティーも万全な」製品を開発したアリランの開発者を称賛した。だがKCNA提供の写真には、完成した携帯電話を検査し、梱包する作業員の姿が写っていたものの、実際の組み立てラインの写真はなかった。

 北朝鮮のIT事情の情報収集や分析を行うウェブサイト「ノースコリア・テック(North Korea Tech)」を運営するマーティン・ウイリアムス(Martyn Williams)氏は、「KCNAは携帯電話がこの工場で製造されていると伝えているが、これらの携帯電話はおそらく中国の製造業者に発注して製造され、販売前の検査が行われているこの工場に輸送されているのだろう」と述べた。

 ウェブサイト「Tech In Asia(テック・イン・アジア)」のスティーブン・ミルワード(Steven Millward)氏の見解も同じだ。「おそらく製品のほぼすべてが中国製で、金正恩氏が視察した機材のまばらな工場で最終の梱包作業のみが行われているのだろう」と、ミルワード氏は語った。

 携帯電話は北朝鮮に2008年に導入された。北朝鮮唯一の携帯電話キャリアである「コリョリンク(Koryolink)」の利用者は、利用者間で通話することができるが、国外への通話はできない。同じく、2002年に立ち上がった北朝鮮の「イントラネット」は世界から隔離されており、一握りの利用者は主に当局に承認された情報を交換している。一方、本物のインターネットにアクセスできるのは数百人のエリートのみだという。(c)AFP