【8月12日 AFP】米東海岸に、7月から少なくとも124頭のバンドウイルカが死骸や衰弱した状態で打ち上げられ、米当局が調査に乗り出した。打ち上げられたイルカのうち数頭の肺から病変とみられる痕跡が発見されたことから、専門家らは感染性病原体が大量死の原因ではないかとみて調査を進めている。

 米海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)海洋漁業局(National Marine Fisheries Service)は8日、7月に入って東海岸のニューヨーク(New York)州、ニュージャージー(New Jersey)州、デラウエア(Delaware)州、メリーランド(Maryland)州、バージニア(Virginia)州で「予想を超える著しい数の死骸」が海岸に打ち上げられており、当局では「異常な大量死」として調査を始めたと発表した。

 NOAAの報道官はAFPの取材に対し9日、7月に89頭が見つかり、8月はこれまでに35頭が打ち上げられたと述べた。

 NOAAの8日の声明によると、1頭のイルカの細胞から麻疹ウイルスに感染したとみられる兆候が発見されたという。NOAAは、現段階では大量死が麻疹ウイルスによるものかどうかは断定できないとしつつ、「感染性病原体が(大量死の)可能性として最も高い」と指摘している。

 麻疹ウイルス感染症は、イヌやネコが感染する犬ジステンパーの海洋ほ乳類版といえる。犬ジステンパーウイルスは感染したイヌの中枢神経系を攻撃して、呼吸障害やおう吐、下痢、脳浮腫などを引き起こし、死に至らしめることの多い感染症だ。

 科学者によると、イルカの多くは発見されたときに既に死んでいた。一部のイルカは打ち上げられた時点では生きていたが、まもなく死んだという。

 例年であれば、たとえばバージニア(Virginia)州に7月に打ち上げられるイルカは平均7頭だが、今年はこれを大幅に上回る47頭が打ち上げられた。

 米国では1987年と88年にも麻疹ウイルスが原因とみられるイルカの大量死が発生し、ニュージャージー州からフロリダ(Florida)州にかけてバンドウイルカ740頭が死んでいる。(c)AFP/Kerry SHERIDAN