【8月11日 AFP】スペインとフランスの合同捜査チームは10日、中国移民を欧州や米国に密航させていた国際人身売買組織を壊滅させたと発表した。組織の「中心的人物」2人がバルセロナ(Barcelona)で逮捕されたほか、スペイン国内の複数の空港で49人が、フランス国内で24人が逮捕された。同組織への捜査は、2011年7月から行われていた。

 警察の発表によると、同組織は、中国人を米国のほか、スペイン、フランス、ギリシャ、イタリア、英国、アイルランド、トルコなどに密航させるための偽の身分証明書とパスポートを提供する見返りに、1人につき4万~5万ユーロ(約510万~640万円)を請求していた。また、性的搾取を目的にした人身売買にもかかわっていたという。スペイン警察は、組織がバルセロナ市内に持っていた2か所の拠点から、台湾、韓国、マレーシア、日本、香港(Hong Kong)、シンガポールなどのアジアの国や地域のパスポート81点を押収した。

 警察は「この国際人身売買組織は、中国国内にある中枢部と各国で活動する独立した実行グループから成る完璧に役割分担されたピラミッド型の組織で、各実行グループは完全に別個の存在だったため、捜査は難航した」としている。実行犯は、移民が中国からスペインに渡る際に同行し、そこから最終目的地である英国や米国に向かわせていた。

 主に中国やマレーシア出身の実行犯らは、組織の中心グループから「完全な信頼」を得ており、「移動の際に通過する欧州各国の空港や街を知り尽くしていた」という。仕事が終わると、「当局の追跡が困難になるように」、すぐに自分が拠点とする国に戻った。

 バルセロナでは到着した移民を別の実行グループが迎え、次の渡航日まで安全な場所にかくまった。中国からの飛行ルートや渡航書類などは、前回の密航の成否に応じて、あるいは組織の摘発をまぬがれるために常に変更されていた。移民は、入国審査で怪しまれないように、団体旅行客の中に紛れ込むなど、細かい指示を与えられていたという。(c)AFP/Katell ABIVEN