【8月10日 AFP】ある種の血圧降下剤を10年以上服用している閉経後の女性は、乳がんを発症するリスクが2倍になるという調査結果が5日、米医学誌「米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)」に発表された。

 この研究論文によると、降圧剤のカルシウムチャンネル拮抗薬(CCB)を服用している女性は、服用していない女性に比べて、乳がんリスクが2.4倍から2.6倍高くなるという。

 今回の調査結果は、観察的研究に基づくもので、リスク増加をもたらす原因には言及していないが、公衆衛生上大きな意味合いを持つ結果かもしれないと専門家らは指摘する。

 論文によるとCCBは、2009年に米国で一般的に使用された処方薬の第9位で、実際に調合された処方箋の数は9000万以上に上っている。CCBの種類には、アムロジピン(amlodipine)、ジルチアゼム(diltiazem)、フェロジピン(felodipine)、イスラジピン(isradipine)、ニカルジピン(nicardipine)、ニフェジピン(nifedipine)、ニソルジピン(nisoldipine)、ベラパミル(verapamil)などがある。

 CCBには、心臓や動脈の筋肉へのカルシウムの流入を阻害し、血管を拡張して心拍数を下げる効果がある。

「利尿剤、ベータ遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)など、他の血圧降下剤には、乳がんリスク増加との関連性はない」と論文は述べている。

 今回の乳がんリスクの調査は、米北西部ワシントン(Washington)州の55~74歳の女性を対象に実施された。このうち、浸潤性乳管がんを発症した人が880人、浸潤性小葉乳がんを発症した人が1027人、がんを発症していない対照群として参加した人が856人だった。

 調査の結果、発症確率が乳管がんでは2.4倍、小葉乳がんでは2.6倍高くなることと、CCBを10年以上にわたって服用することに関連性が見つかった。

 米ボストン大学(Boston University)スローン疫学センター(Slone Epidemiology Center)の上級疫学者、パトリシア・クーガン(Patricia Coogan)氏は、本論文の解説記事で「今回の調査により、CCBの長期にわたる服用が乳がんリスクを増加させるという仮説を裏付ける確かな証拠が得られた。事実であれば、この仮説の臨床上および公衆衛生上の意義は極めて大きい」と述べている。「今回の調査で明らかになった2~3倍のリスク増加に対する確証が得られれば、CCBの長期服用は、乳がんの改善可能な重大リスク要因の1つとして位置付けられるだろう」(c)AFP