【8月6日 AFP】長らく、「100%ピュア」を合言葉に自国の宣伝を行ってきたニュージーランドだが、同国の乳業大手フォンテラ(Fonterra)の乳製品からボツリヌス中毒を引き起こす細菌が見つかった問題により、そのイメージが損なわれるのではないかとの懸念の声が上がっている。

 フォンテラの問題は一企業の問題に収まらず、国全体に影響を及ぼしかねない。危機管理広報に詳しいマッセー大学(Massey University)のクリス・ギャロウェー(Chris Galloway)氏は、ニュージーランド経済でフォンテラが占めるウエートは大きく、ニュージーランドの輸出先として近年急成長していた中国におけるイメージが損なわれることへの影響も大きいと述べる。

「ニュージーランドのイメージとフォンテラのイメージは切り離すことができず、密接につながっている。フォンテラはわが国最大の輸出企業で世界中の市場でニュージーランドを代表している」と、ギャロウェー氏はAFPに語った。「この問題は『100%ピュア』ブランドに打撃を及ぼし、その余波もしばらく続く可能性がある」

 ニュージーランドのイメージは特にアジア地域で価値がある。食の安全をめぐる問題が相次ぎ、地元製品への不信感が高まっている中国では特に際立っていた。

 汚染の原因は、ニュージーランド北島(North Island)の工場における不衛生なパイプだったことが判明しており、汚染の疑いのある製品の回収および廃棄は比較的容易だろう。だがジョン・キー(John Key)首相が懸念しているのは、この問題でニュージーランド製品への国際的な評価が損なわれてしまうことだ。

 キー首相は、フォンテラが問題を公表するのが遅すぎたと批判しているが、これに対しフォンテラのセオ・スピアリングス(Theo Spierings)最高経営責任者(CEO)は北京(Beijing)での会見で、情報公開を遅らせたことを否定。24時間以内に関係企業や当局に問題を報告したと述べ、反論した。

■「再発」フォンテラの対応に批判

 ギャロウェー氏は今回の問題が乳幼児向け製品に関係していたことが大きかったと指摘する。フォンテラが乳幼児向け製品に関連して問題となったのは、今回が初めてではないからだ。

 ギャロウェー氏は、2008年にフォンテラが一部所有する三鹿集団(Sanlu Group)が中国で粉ミルクのメラミン汚染を起こした問題に触れ、「(乳幼児向け製品で)問題が繰り返し起きていることで、人々は今回の問題が一回限りのことだと信じることができないでいる」と語った。

 ニュージーランド北島の酪農中心地で販売されているマナワツ・スタンダード(Manawatu Standard)紙は、フォンテラがこの5年間、危機管理を改善してこなかったようだと社説で指摘し、「汚染自体よりももっと不安なのは、フォンテラの問題への対応だ。フォンテラは2008年の三鹿集団のメラミン汚染問題から何も学んでいないように見える」と述べた。

 ギャロウェー氏は、このような悪いニュースに企業が対応する唯一の方法は完全な透明性だとし、情報公開を遅らせていると政府から非難されたことで、フォンテラへの信用が損なわれてしまっている状態だと述べた。

 一方、ブランディングに詳しいオークランド大学(University of Auckland)のマイク・リー(Mike Lee)氏は、諸外国の当局がフォンテラの対応に満足しているのであれば、フォンテラには復帰の道もあると語った。「基本的に(乳製品の)需要は供給を上回っている。フォンテラの株価は一時的に下がったが、しっかりと対応さえすることができるのなら(回復も可能だ)」(c)AFP/Neil SANDS