【8月6日 AFP】ある種の遺伝子を持つ母親は、2007~09年の景気悪化時、たとえ自分の家計が悪化していなくても、子どもに対して普段以上に厳しい態度をとったことが分かったとする米研究チームの論文が5日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。環境は人間の言動に大きな影響を与える可能性があり、遺伝的変異を考慮すると特にその傾向が強いことを示唆する研究結果だ。

 研究に参加したニューヨーク大学(New York University)のドフン・リ(Dohoon Lee)氏はAFPに対し、不況によって増えた子育ての厳しさの度合いは「それほど大きくはないが、非常に大きな意味を持つもの」と話す。

 リ氏によると、感受性に関連するある遺伝子を持つ母親の厳しいしつけ行動は、失業率が10%上昇するごとに2.3倍になり、母親全体の1.6倍を上回った。

 研究チームは、怒鳴る、脅す、尻を叩く、平手打ちをするなどの、心理的指標と身体的指標、それぞれ5項目を基準に、しつけの厳しさを測定。分析対象には、「Fragile Families and Child Wellbeing Study(脆弱な家庭と子供の幸福についての研究)」からの2600人以上の女性のデータが使用された。1998~2000年に国内の主要な20都市で生まれた約5000人の児童も研究対象とした。

 その結果、「DRD2遺伝子Taq1A多型」の対立遺伝子、またはその変異を持つ母親は、2007~09年の景気後退期に、より厳しいしつけ行動をとったことがわかった。この遺伝子変異は、「脅威」や「報酬」に対する反応に影響する脳内化学物質ドーパミンに関係がある。

 論文は、「この遺伝子型を持つ母親は、持たない母親よりも、経済が悪化すると(しつけ行動が)悪くなり、改善すると逆に良くなった」と報告している。(c)AFP