【7月30日 AFP】インド北部チャンディガル(Chandigarh)で二十数年前に死去したマハラジャ(王侯)の遺書をめぐり、現地の裁判所は25日、遺書は偽造されたものだとして、娘2人に2000億ルピー(約3300億円)相当の遺産相続を認める判決を下した。娘たちの代理人が29日、発表した。

 問題となっていた遺書は、1989年に死去したマハラジャ、ハリンデル・シン・ブラール(Harinder Singh Brar)氏が残したとされるもの。1947年の独立以前、インドには565の藩王国があったが、ブラール氏はこのうちの1つ、ファリドコット(Faridkot)を治めていたシーク教の王侯。

 報道などによると、32年前に弁護士と使用人によって遺書が偽造された際、ブラール氏は唯一の息子を交通事故で失い、うつ病に苦しんでいたという。ブラール氏の遺産には城塞、宮殿、首都ニューデリー(New Delhi)の一等地にある不動産、現金、宝石類、ファリドコットの飛行場などが含まれているが、偽造された遺書には遺産相続人として家族の名は1人も記されておらず、遺産は弁護士と使用人が運営する企業合同が受託するよう記されていた。

 ブラール氏には娘が3人いたが、三女は2001年に死去している。残る2人のうち、次女のディーピンデル・コール(Deepinder Kaur)さんは、偽造された遺書に従って設立された企業合同の会長に就いていた。しかし、長女のアムリット・コール(Amrit Kaur)さんが92年、遺書は偽物だとして提訴。この企業合同を相手取り裁判を闘ってきた。

 21年に及んだ法廷闘争の末、裁判所は25日、遺書は偽造されたもので法的に無効だとし、2人姉妹の双方をブラール氏が残した遺産の正式な相続人とする判決を下した。

 英国からの独立後、藩王国はそれぞれが協定や合意を経てインドまたはパキスタン傘下に入った。インド政府は1971年に憲法を改正し、マハラジャたちを優遇する特権や金銭の支給制度を廃止した。このため豪華な生活スタイルを失ったマハラジャの多くは、保有していた宮殿や城塞をホテルなどに改装し収入を得ている。だが、そうしたマハラジャ一族たちは今でも各地の地元住民から元王侯貴族として尊敬され、一部の宮殿や城塞、土地の所有を続けている。(c)AFP