【7月29日 AFP】イタリアで黒人として初めて閣僚に起用されたセシル・キエンゲ(Cecile Kyenge)移民融和担当相が26日、連立与党・民主党(PD)の集会で演説中に聴衆の1人からバナナを投げつけられた。幸いバナナは演壇まで届かずキエンゲ氏には当たらなかったが、この嫌がらせに対しイタリア政界をはじめ全国で非難の声が高まっている。

 アフリカ・コンゴ民主共和国(旧ザイール)生まれでイタリア国籍を持つキエンゲ氏をめぐっては、反移民を掲げる野党・北部同盟(Northern League)の議員が今月初めに同氏をオランウータンに例える発言をするなど、衝撃的な嫌がらせ行為が相次いでいる。

 キエンゲ氏は今回の「バナナ事件」について、直後に「食べ物を粗末にするのは悲しいことだ」とコメント。挑発に乗ったり差別主義を声高に非難することを避けてきたこれまでの姿勢を貫いた。

 キエンゲ氏は翌27日に出席した「左翼・エコロジー・自由党(Left Ecology and FreedomSEL」の集会で、聴衆から拍手で迎えられ「イタリア人であることを誇りに思う」と挨拶した。また、「私に問題があるわけではないと思う。不幸な人、不満を発散している人たちがいるということだ。そして、彼らの不満に耳を傾けるのが私の仕事だ」「イタリアの良い面を引き出さなければならない」などと報道陣に語った。(c)AFP