【7月29日 AFP】電子メールとテキストメッセージの発達にともない、世界各国の郵便局は急速に変貌を遂げている――郵便局に打撃を及ぼしたIT革命を活用する形で。

 近年、従来の郵便と小包の利用は急速に減少している。国連機関の万国郵便連合(Universal Postal UnionUPU)によると、2011年の世界の配達は前年比で3.7%減少した。欧州と旧ソ連圏では5.1%減少していた。

 手紙文化の終わりは、郵便局に消滅か変化かの選択を強いた。

 英国は今月、現代的なコミュニケーション事業に変化することを目指し、郵便事業ロイヤルメール(Royal Mail)の半分以上を民営化する方針を発表した。

「これは理にかなっている。ロイヤルメールの未来を長期的に持続可能な基盤に乗せるために設計された商業的な判断だ」と、ビンス・ケーブル(Vince Cable)民間企業相は語る。「オーストリア、ドイツ、ベルギーなどの民営化された事業者が、高品質で幅広いサービスを提供しながらも、ロイヤルメールを大幅に上回る利益を上げているという欧州における進展とも一致する判断だ」

■ネットショッピングで急成長、2キロ未満の宅配事業

 手紙と小包の配送量が減少する中、希望も芽生えている──2キログラム未満の小型包装物だ。

「(小型包装物は)インターネットショッピングのおかげで、驚異的な成長を遂げている」と、UPUのウェンディ・エータン(Wendy Eitan)氏は語る。鍵は、郵便局に対する信頼性や安心感を活用することだという。

 オンラインショッピングとそれが生み出す無数の小型包装物は、新生した郵便局に大きな恩恵をもたらしている。

 ドイツポスト(Deutsche Post)は、小型包装物の配送ネットワーク増強のため、7億5000万ユーロ(約970億円)を投じて新たに2万か所の配送受付所を設置する。スウェーデンとデンマークの共同郵便サービス、PostNordも、オンライン宅配サービスに事業の主力を移行させたことで経営が好転し始めた。

 この5年間で従来の郵便配達が約30%減少したスペインでは、国営コレオス(Correos)が「電子商取引によるバリューと特別なソリューションをともなう小型包装物の配送事業を開発する」方針を示している。

■さらに広がる郵便局のビジネス、携帯電話からファッションブランドまで

 フランス郵政公社(La Poste)はさらに一歩踏み込んだ事業を打ち出している。小型包装物を「開発の主要部門」と位置づけるのみならず、高齢者への薬剤配送やガス・電力の検針など、10以上の実験プロジェクトを立ち上げた。

 各国の郵便局は、銀行業務や携帯電話事業などへも進出している。イタリアの郵便局ポステイタリアーネ(Poste Italiane)は現在、預金口座600万件を持ち、これまでに携帯電話のSIMカード300万枚を販売した。

 アルゼンチンでは、郵便局が携帯電話のプリペイドカードを販売し、税金支払い窓口となっている。一方、ブラジルは郵便局で「独自の電話ブランドを持つという発想」の下、2015年に携帯電話の販売を開始する。

 一部の国はさらに一歩先へ踏み出している。フィンランドの郵便局はスイーツやおもちゃ、文房具の販売を始めた。だが極めつけは米国のUSポスタルサービス(U.S. Postal ServiceUSPS)だろう。USPSは来年、「雨、暑さ、雪(Rain, Heat & Snow)」のキャッチフレーズで、郵便局員の制服をベースにした服飾ブランドを立ち上げる計画だ。(c)AFP/Katia DOLMADJIAN