【7月29日 AFP】ニューヨーク(New York)など米北東部沿岸で、このところ出生数が急増している──昨年10月、巨大ハリケーン「サンディ(Sandy)」の上陸で祖父母の家に子どもたちを避難させて2人きりになった夫婦が、停電で電気もテレビもつかない中、できたことは「子作り」だったようだ。

 サンディによる死者は100人を上回り、数万人が避難を余儀なくされ、損害は推計800億ドル(約7兆8000億円)に上った。甚大な被害に見舞われたこの一帯で、出生数増加は明るい兆しと受け止められ、地元メディアには「サンディベビー・ブーム」の特集があふれている。

 ニュージャージー(New Jersey)州ロングブランチ(Long Branch)にあるモンマス医療センター(Monmouth Medical Center)では、昨年371人だった7月の新生児が、500人に上りそうだ。産科施設を充実させたことも一因だが、人々の話などから「サンディが子作りに一役買った可能性もある」と医師らは語る。

 同州ネプチューン(Neptune)のジャージーショア大学医療センター(Jersey Shore University Medical Center)でも、今月の新生児は200人に到達する勢い。前年同月の160人から25%増加する見込みだ。

 こうした出生数の急増が、ただ一つの自然災害に帰するという見方について、統計学者たちは懐疑的だ。しかし、2010年にハリケーン後の出生傾向に関する共同論文を「人口経済学ジャーナル(Journal of Population Economics)」に発表した米ブリンガム・ヤング大学(Brigham Young University)の経済学者リチャード・エバンス(Richard Evan)氏は、最近子どもが生まれている被災地のカップルの多くが元々子作りを計画していたとしても、サンディ襲来で「実行が早まり」、妊娠が急増したことは大いにありえるという。

 エバンス氏ら研究チームは、大西洋岸やメキシコ湾岸にハリケーン警報が24時間発令されるごとに、9か月後の出生数が2%上昇することを発見したという。同氏は「7年間にわたって地理的に広い範囲を調べてきた。研究結果は非常に説得力がある」と語った。

 同氏によれば、災害時にカップルが子作りに励む理由はさらに研究しなければ解明できないが、「他にすることがない」という要因に加え、感情の高まりが後押しする可能性を示した研究もあるという。

 また、例えばオクラホマシティー連邦政府ビル爆破事件の際など、大きな事件の後に地域社会の結束が強まり、カップルの絆も深まることを物語る証拠もあるという。

 一方、自然災害に伴う妊娠・出生数の増加をめぐっては、日常生活の途絶を背景に、カップルが避妊具を使い忘れたり、使い果たしたりするという、より一般的な見方もある。(c)AFP/Angus MACKINNON